後60年以来の大変革が起きた。それに呼応するように、阪神淡路大震災を契機に自然災害において専門家と一般の人々との関係も大きく変化した。それまで、「想定される東海地震」に対して地震対策強化地域では、全ての地震防災対策が「警戒宣言が発令されることを前提」としていたために、突然の地震災害には全く役に立たない対策しかなされていないと多くの地震に関わる専門家の批判を浴びていた。阪神淡路大震災は、大規模地震災害対策法(いわゆる大震法)が想定していた東海地震ではなかったが、これを契機に、予知がなされずに突然に地震災害に見舞われた場合への防災対策に重点が置かれるように変わりつつあるのは喜ばしいことである。とくに、2001年11月に政府による『東海地震の見直し』を受けて、新たに地震防災対策強化地域に指定された名古屋市をはじめとする東海の多くの地域では、警戒宣言が発令されることなく突然地震災害が発生することが多いのだ、という認識が広まってきた。地震予知に関わる研究者が長年にわたって埋めようと努力してきた「地震予知に関する社会の認識とのギャップ」が、少なくとも東海地域ではほぼ解消しつつあると思える状況となった。もっとも、分かり易く物事の本質を伝えることは、いつまでも難しい課題ではあるが。退職にあたって 〈阪神淡路大震災の衝撃〉28
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