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一回くらいは現地調査に行ける。一部同業者のように全国紙の「赤旗」などに書いたりするより、中日新聞に取り上げてもらう方が私の地道に生きたいという性格に合うし、この地方の人々の関心もひくだろう。私は、このような地域密着型の問題を伝統法学的な型にはまらずに、自由に追いかけて「学際的」に分析し提言するのが好きだ。この仕事をやったおかげで、動物写真家、ヒメボタル専門家、環境生態学専門家、環境保護活動家、環境カウンセラー、卒論でヒメボタルに取組む才媛の女子学生、動物好きの中学生や小学生とも知り合いになった。もう一例。去年の憲法記念日には中津川に住む法学部の同級生に講演を頼まれたが断った。そして、私より若い岐阜大学の学部長に代わりを頼んだ。当日は私も同行した。主催者と蕎麦屋で地酒を飲みながら打合せをした。会場では主演者の後に舞台に上がったが「トーク・ショウ」はやらず、20分くらい補足的な噺をして、その後で会場に詰掛けた人々と質疑応答をした。驚いたことに400人は入る会場は超満員だった。その話を聞いたもう一人の同級生が、また頼みにきた。「2月中旬に、もっと小さな会場でやってくれませんか?」 県内とはいえこれまであまり縁がなかった土地で30人くらいの老人、父母、高校生たちが静かに話合うという。二つ返事で引き受けた。多数の聴衆の拍手を受ける場所で講演することが大好きな学者もいれば、私のように小さな会場で顔つき合わせて話合う方が好きな人も様々にいて、社会環境はバランスを保つことができる。どっちがいいとかいう話ではない。傲慢か謙虚かということでもない。羞恥心があるとかないとかという話でもない。互いに異なる特色を持つ色んな人々が入り混じって一緒に住んでこそ、人類は地球生態系を破壊し尽くす前に、何とか生き残る路を模索できると思っている。KWAN「環」創刊後の4年間を顧みて 「変わりゆくエリート教員文化」のなかで17

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