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りお詫びを申しあげたい。ごく最近、藤原書店から西澤先生に届いた電子メールによると、だいぶ苦戦しているらしい。よい本ができるだろうという自信はあったが、正直に言って、それがマーケットで受け入れられるかということについては最後まで不安が残っていた。いまのところ、残念ながら不安が的中した形になっている。「環境学」という確固たる学問体系があり、環境問題に対するひとつの処方箋が存在しうるとか、環境問題はグローバルないしナショナルの問題であり、伊勢湾流域圏など関係ないとかと思っている人は、ぜひこの本を読んで欲しい。私たちと自然との関わりは真空の中でなく、まさに現場で起こっているのであり、そうした関わりが世界中で多様であるように、そこで生じる環境問題やその処方箋、そこへの学問的なアプローチも一様ではなかろう。西澤先生は藤原書店の『機』(No.166)における「環境学を構築する基本情報」という文章で、ファッション化する「環境」言説を厳しく批判し、様々な専門領域の知識と経験を突き合わせることでしか、環境問題は総合的に論じられないと述べている。環境学研究科は異種交雑(地理学の流行の言葉を使えばhybridity)のアリーナを提供する。そこで必要とされるものは、ローカルに考えること、そして少しばかりの境界を越える想像力である。実のところ、出版社からは販売努力を求められている。だからというわけではないが、私自身、来年度のある授業でこの本を教科書として指定し、伊勢湾流域圏を舞台に異種格闘を試みるつもりだ。もし可能ならば、ぜひ教科書や参考書、レポート課題などで活用していただきたい。あるいは、一言、この本の存在に触れていただければありがたい。私自身、最初は懐疑的だったが、出身地も世代も専門分野も異なる人たちとの関わりに次第にのめり込むようになった。私の中の想像力を刺激したからである。その意味で、増澤先生『環境学研究ソースブック』ができるまで14

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