パリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国立高等建築学校、天津大学と合同建築・都市設計ワークショップを開催
大学院環境学研究科都市環境学専攻建築学コースは、2015年9月14日(月)から18日(金)までの5日間、フランスのパリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国立高等建築学校(ENSA-PVS)を主会場として、ENSA-PVS、天津大学と合同で、「A Parisian Covered Passage - Pedestrian axis of Seine river left bank」をテーマに、パリ東部のセーヌ川左岸の再開発地区の中に、今日的なパサージュ(商業空間も含む歩行者空間)を提案する建築・都市設計ワークショップを開催しました。今回はENSA-PVSの大学院生・学部生約60名と天津大学の学部生2名、および名古屋大学大学院建築学コース博士課程前期課程1年の蒲健太朗、小野竜也、源慧大、古田大介、王柔、袁聡の6名と同2年の錢亀夏彦がティーチングアシスタントとして参加しました。ワークショップの指導は、Boris Weliachew教授、Marco Tabet教授(以上ENSA-PVS)、鄭穎副教授(天津大学)、小松尚准教授(名古屋大学)が行いました。今回ENSA-PVSからはTabet教授のアトリエの院生と学部生が参加し、日仏中の混成4グループとENSA-PVSの院生と学生からなる8グループがこの提案課題に取り組みました。
本ワークショップは、異なるバックグラウンドを持つ学生同士が英語で対話し協働し、提案する貴重な機会を提供するものです。この取り組みは、2009年4月以降、両大学の間で締結された学術交流協定に基づき実施されています。毎年4月に名大で、9月にパリでWSを行っており、ENSA-PVSでのWSは今回が6回目(名大でのWSを含めると11回目)になります。 街区の建物の中をショートカットして街路同士をつなぐ歩行者空間であるパリのパサージュは、19世紀に誕生しました。かつては100を超えるパサージュが存在しましたが、1970代以降の都市開発により、現在では15にまでに減っています。しかし、車を気にせず楽しく歩けて、買い物や食事ができるこの歩行者空間は、市民の生活をささえ、観光客を惹きつける魅力的な場所になっており、これに今日的な解釈を加えて、ENSA-PVSが立地する再開発地区に提案することが求められました。
ワークショップは、まず1日目はパサージュや本課題に関する講義を受け、グループで既存のパサージュの見学と調査を行い、課題や提案のポイントを議論し、指定された5つのスペースの中でどこを選択するかを決定しました。2日目以降はグループ作業を行い、3日目には中間発表会、5日目の夕方には成果発表会とフェアウェル・パーティを開催しました。この間、大学内の図書館や建築材料の展示室の見学、セーヌ川左岸の再開発主体であるSEMAPA事務所の見学を行いました。
最終日の成果発表会では、各グループの調査・提案が図面(A0版数枚)と模型によって発表されました。本ワークショップの担当教員だけでなくENSA-PVSの関係者が多数参加し、意見交換と講評が行われました。今回の評価ポイントとしては、①屋根があり街区を抜けるというパリのパサージュの特性をどう継承・発展させているか、②再開発地区の比較的大きな空間単位に対してどんな小さな空間単位でパサージュを構成し、またそれを敷地のコンテクストにどうフィットさせようとしているか、③構造の合理性はあるか、④自然光をどう取り入れているか、⑤この地区(知的創造業務系(含む大学)・商業系・居住系が混在)のパブリックスペースとして想定されるアクティビティにどう対応しようとしているか、といった点から講評とともに成績が付与されました。特に5日間という短い時間のため、提案の魅力性や発展性に強さがあるものが評価され、最優秀の提案には日仏中の混成チームの一つ(名大は古田大介君がメンバー)が選ばれました。
なお、本ワークショップに参加する学生の派遣は、独立行政法人日本学生支援機構の平成27年度海外留学支援制度(協定派遣)採択プログラムとして実施し、教員の派遣等は環境学研究科研究科長裁量経費の支援を受けました。