環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 地球表層環境の物質循環像をとらえる

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地球環境科学専攻 物質循環科学講座
中川 書子 准教授
(環境化学)
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観測を通じて自然と触れ合えるのは非常に楽しいですよ!
の好きな色は、子供の頃からずっと変わらず青色です。水色の空や青い海に恋していて、おもむろに青色の絵の具を使って空と海をよく描いたものです。次に好きな色は緑色です。明るい緑、深い緑、青みがかった緑など、色々な緑色を作って描いた植物達には癒やされます。そんな青色や緑色にあふれる自然環境は、私達人間にとって無くてはならない愛しい存在であり、彼らとうまく調和しながら生きていく必要がありますが、相手はまだまだ分からないことでいっぱいです。もっと彼らのことを知りたい、彼らのことを解明していく一員になりたいと思い、私は環境学の分野に足を踏み入れました。化学がわりと好きなので、自然環境を化学的な手法を用いて調べていくことにしました。
達の暮らす地球の表層環境は、地球の大部分を占める固体地球と異なり、主に、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、塩素といった軽元素、いわゆる“揮発性元素”から成り、その化合物が、空や海、陸域表層部を構成します。これらは一カ所に留まっている訳ではなく、姿形を変えながら地球表層環境を循環しています。これは「物質循環」と呼ばれていますが、この過程で軽元素は、二酸化炭素やメタンといった温室効果気体に姿を変えて大気圏にいる間は地球を温め、逆に有機物や鉱物に姿を変えて地圏にいる間は、地球を寒冷化させます。その循環の駆動力の多くは生命活動によるものですが、特に、近年の人間活動が地球表層環境の物質循環に与える影響力は非常に大きなものになってしまいました。人口や人間の生活レベルを300年前くらいに戻せれば問題は無いのでしょうが、それが出来ないのであれば、地球表層環境における軽元素の物質循環像を理解し、人間活動が与える物質循環の変化に対し、地球環境がどの程度受け止められるのかを評価しながら、その範囲で生きる道を探っていく必要があります。これは、ある環境におけるある物質の現存量だけを調べるだけでは評価できません。
球表層環境にある軽元素の多くには2種類以上の安定同位体が存在し、その割合は物質が循環する過程で少しずつ変化します。しかもその変化量は、循環速度に応じて異なるため、これをうまく利用すると、その物質の循環速度が分かります。つまり、同位体組成は地球環境における各物質からの物質循環像を示すメッセージということになりますが、それを読み解けるかどうかは私達の腕にかかっています。私はその腕を磨き、未だに謎の多い地球表層環境の物質循環像を明らかにし、人間が自然環境とうまく共存していく道を模索していきたいと思います
(なかがわ ふみこ)
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