環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 ホネの形に魅入られて

顔写真
地球環境科学専攻 地球史学講座
藤原 慎一 助教
(機能形態学)
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肢動物とは、両生類や爬虫類、鳥類、哺乳類を含む脊椎動物の中の1グループで、文字通り、4本の「肢」をもっています。私たちの周りにいる四肢動物は「肢」を様々な用途で用い、その結果、様々な環境へと進出しています。肢を使って地面すれすれのところを這い歩くトカゲや真っ直ぐに立って軽快に走るネコ、肢で枝をしっかり把握して枝下を逆さまに歩くヤマネ、肢(翼)で羽ばたいて飛ぶカラス、肢で地面を掘り進むモグラ、水中で肢を羽ばたかせて泳ぐウミガメ―こうしてみると、四肢動物が様々な環境へと進出していくことができたのは、「肢」の運動機能を多様化させたことが大きな要因のひとつと言えましょう。
や膝、足首、肩、肘、手首などの各関節、骨格要素や主要な筋肉の配置と構成―これらの基本的な構造は四肢動物で共通しています。彼らの運動機能の多様性を考えると、これは驚くべきことです。四肢動物は進化の過程で四肢の筋肉や骨格にどのような工夫を重ねながら、多様な運動機能へと分化していったのでしょうか。いろいろ動物の解剖や骨格標本の観察をしていると、動物の骨のカタチの違いが関節の可動方向や筋の付着位置の違い、骨格の強度の違いを反映していることに気が付きます。そして、それが動物の運動機能の違いに現れていることに気が付くことがあります。私はこれまで、四足歩行性の四肢動物の前肢姿勢と骨格形態の関係を主に研究し、それをもとに恐竜など絶滅動物の姿勢の復元を行う研究をしてきました。
大に赴任したのは2012年のことですが、様々な人の伝手があり、幸いにもモグラや鳥類の標本がいくつか手に入るようになりました。おかげで、現在はモグラの穴掘り適応や鳥類の飛翔適応についての研究を進めることができています。いずれも、四肢動物の中で地中や空中へと生活圏を広げることができた特殊なグループです。彼らがどのような適応を身に着けたのか、骨の「かたち」からその運動機能を復元することができるのか―研究の成果が出るのが今から楽しみです。
(ふじわら しんいち)
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