環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 ゆっくり滑りと地震の発生

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地球環境科学専攻 地震火山研究センター
加藤愛太郎 准教授
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東北地方太平洋沖地震前に見られたゆっくり滑りの伝播の概念図。本震時の滑り量が 大きな領域よりも深い側で、ゆっくり滑りが起きていたと推定される。
生時代に地元で成人式を済ませ、アルバイトのために大阪の下宿に戻った次の日の早朝に1995年兵庫県南部地震に遭遇しました。その当時は地震に関する知識はほぼ皆無で、激しい揺れに襲われた時は、地元で発生が危惧されていた「東海地震」がついに発生したのかと勘違いしたほどでした。そして、地震はなぜ起きるのか?、地震が起きる仕組みとは?、という素朴な疑問が湧いてきて、それ以降地震の研究を続けています。
震とは、震源域に蓄積されたひずみエネルギーを断層の滑り(すべり)運動により解放する現象です。通常の地震では、断層が高速に滑り(1秒間に約1mの滑り)地震波を放射することで地表が揺れます。地震のマグニチュード(M)が大きいほど、地震波の揺れの強さは大きくなります。近年、ゆっくり滑りと呼ばれる、ゆっくりと断層が動いて地震波を放射しないでエネルギーを解放する特異な現象が世界中で見つかりました。プレート境界の断層では、ゆっくり滑りと高速な滑りの両方が起きていて、お互いに影響を及ぼしあうことで複雑な滑り現象が起きていると考えられています。
は、国内外で発生した大きな地震の前に観測された地震活動(前震活動)の解析・研究を進めています。例えば、2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)や2014年チリ北部地震(M8.2)の発生前には、地震活動の移動を検出し、本震の震源近傍でゆっくり滑りがプレート境界面上で起きていたことを示唆する結果を得ました。その他の大きな地震の震源近傍でも、地震の発生前にゆっくり滑りが起きていたことを示唆する事例をいくつか発見しました。
れらの前震活動には、活発なものから極めて低調なものまで幅広い多様性が見られ、複雑な様相を呈します。どのようにしてこのような多様性が生じるのか、ゆっくり滑りが地震発生にどのように関与しているのか、通常の地震活動と異なる特徴はあるのか、といった着眼点で研究に取り組んでいます。
(かとう あいたろう)
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