環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 鉄と環境問題

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都市環境学専攻 地域・都市マネジメント講座
尾崎 文宣 准教授
(建築構造)
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たちの身のまわりには「鉄」があふれています。部屋の中を見回しても、スチールラック、机、テレビ、PC・・・・と、鉄を用いたものはすぐに見つかります。日々の生活に必要な、家電製品、自動車、鉄道にも多くの鉄が使われ、ビルや橋梁などの社会を支えるインフラ構造物も鉄が無くては成立しません。人類は、鉄を巧みに利用して文明を発展させ、また、日本刀や戦車などの鉄製の武器を用いて争いをしてきました。鉄と炭素の合金「鋼」は、自販機のミネラルウォーターより安く、また、製造方法を工夫することで、強度の幅を20倍(200〜4,000 N/mm2)以上に拡げることができます。安価で、多様な強さを発揮する材料だからからこそ、多くのものが鉄でつくられ、それゆえ「鉄は産業のコメ」、「鉄は国家なり」の言葉が生まれました。
球の総質量の3割が鉄で、鉄という資源は、コストや可採技術を無視すれば、それこそ無尽蔵です。私たちは、この無尽蔵の鉄を、ここ10数年の間に、未だ経験したことが無いスピードで消費しています(グラフ)。鉄の消費と地球温暖化は密接な関係があります。鉄鉱石から鋼を生産する際に大量のCO2が発生し、日本の総CO2排出量の17%が製鉄業から排出されています。世界で膨大な鉄鉱石が掘り出され、CO2とともに鋼が生産され、鋼を用いた発電プラントや自動車からは日々CO2が排出される・・・。鉄の消費を抑制できれば良いのですが、急速な工業化を進める国々では、それは難しいのが現状です。
方、日本などの先進国は資源を有効利用する技術を持っており、私の専門分野でも、高強度で粘り強い鋼材を利用することで、鉄の使用量を抑えながら、地震などの災害に強い建物を建設してきました。また、日本では鉄のリサイクルシステムが発達しており、建設に用いられる鉄筋の9割以上が、鉄スクラップからつくられたリサイクル品です。鉄という材料が持つ経済性と環境問題、膨大な鉄が消費される今だからこそ、世界中の人々が知恵を絞ってこの問題を解決すべきではないでしょうか?
(おざき ふみのぶ)
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