環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 風土・国土・ハザード

顔写真
地球環境科学専攻 地球惑星ダイナミクス講座
古本 宗充 教授
(地震火山研究センター)
北地方太平洋沖地震とそれによる東日本大震災は,地震を研究してきた者として,非常に大きな衝撃でした.大きい地震が起きたこともさることながら,三陸という地域で大きな津波被害が出たことも衝撃でした
々地球科学という理学的な雰囲気の中で研究を進めてきましたが,環境学という枠組の中で教育・研究を進めることになりました.自分の中の理学的な発想と環境学をどうすりあわせるかは,結構難しい課題です.その中で,東北地方太平洋沖地震が起きました.この地震はどのような性質であったかなどは理学的な側面であり,東日本大震災は環境学的な側面であると考えるようになりました.そして私にも環境学らしい発想をもって何かできるような気がしてきました.
れまで私にとって震災は,断層から放射された地震波や津波が地面や海面を大きく揺らす事で起きる,といういわば波の発生・伝播による結果でした.しかしいくつかの震災を考えているうちに逆のパターン,つまり風土や国土があってそこをある時大地震が襲ってくるという風に見たらどうかと思い始めました.地震災害の専門家は元々この発想かもしれませんが,私には新しい観点です.「風土・国土・ハザード」というキーワードとしました.残念ながら詳しいことをここで述べるスペースがないのでこれ以上は省略します.
の中でも国土つまりインフラストラクチャなどの被害を調べている内に,それらの多くの部分が劣化の時期を迎えている事を知りました.日本の高度成長期は,50年間ほどの大きな震災のない期間にありました.その時期に建築・建造されたものが,現在経年劣化により地震に対して脆弱になりかかっています.いわば日本の国土は老化をしつつあります.次の南海トラフ沿いの巨大地震がいつ起きるかは不明ですが,国土が老化するのを防がなければなりません.それをどのように進めるかが環境学研究科のやるべき事の一つと考えている,震災後2年の今日この頃です.
(ふるもと むねよし)
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