環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 落ち着いて学問をする

顔写真
社会環境学専攻 地理学講座
堀 和明 准教授
(自然地理学)
写真
河跡湖における調査風景
校生の頃,自分はいわゆる理系で,大学も理系の学部に入学しました.最初は薬学部に進学しようかと思っていましたが,理学部の地理学課程を卒業し,ポストドクターを経て,ようやく工学部(理工学部)に職を得て,さらに文学部の地理学講座を兼務する今の職に就きました.大学が学問をするところだと気付いてからもう15年以上経ちますが,今でもときどき,何のために研究をしているのか,とか,これから何を目指すのか,などと考えることがあります.
んだか後ろ向きの文章ですが,学問そのものに飽きることはなく,地形や堆積物を用いて平野の形成過程を明らかにする研究に取り組んでいます.平野は海面の上昇・低下や気候の温暖化・寒冷化,地殻の隆起・沈降により変化してきました.一例を挙げると,氷河が大規模に融けて海面が上昇することで,現在の平野に海が侵入した時期があります.この見方は,平野の環境変化が海面変動に規定される,つまり平野が変化する原因を平野の「外」に求めるものです.これに対して,変化する原因が平野自身に内在されている,つまり変化の原因を「内」に求める見方もあります.自分の研究は前者を明らかにする方向でしたが,最近は後者が気になるようになってきました.しかし,対象にどのように接近すれば,後者に関して興味深い現象が浮かび上がってくるのか,それが問題です.
ころで,地理学は地表で展開される,自然と人間の関係を探求する学問でもあります.現実の研究ではどちらか一方のみを扱うことが多く,自分の場合も前述した通り自然のみを研究対象としがちです.野外調査でいろいろな場所を訪ねると,自然環境と人間活動との間に興味深い現象をみることもあるので,それを深く理解して表現していくことも,これからの目標のひとつです.
近の世の中は,熱く行動するほうが他者を勇気づけたり,刺激したりして好ましいようですが,自分はそれだと上手くいかないだろうという予感がするので,いつも普通でいられるように冷めていきたいと思います.もちろん熱くなれる一瞬を逃さないようにですが.
(ほり かずあき)
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