環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 「環境色彩:色から影響を受ける人間の心理と行動」

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社会環境学専攻 心理学講座
高橋 晋也 准教授
  (知覚心理学、色彩心理学)
近、あちこちで青色の街灯を見るようになりました。ご存知の方も多いと思いますが、これは路上犯罪抑止効果を狙ったもので(そのため青色防犯灯とも呼ばれています)、6年前に奈良県で初めて導入されて以来たちまち評判になり、今では全国すべての都道府県に設置されているそうです。本当に、青色街灯にそんな効果があるのでしょうか?
の専門は知覚心理学と色彩心理学です。若い頃は前者がメインで錯視の研究などしていましたが、環境学研究科に移って以来、次第に後者の比重が大きくなり、とくに最近では環境色彩によるさまざまな心理効果を調べています。冒頭で紹介した青色防犯灯もまさにそのような心理効果を狙ったものですが、残念ながら、実験室で示されるデータは、世の中の期待ほど単純明快ではありません。たとえば、一般に赤系色は生理的・心理的な興奮を、青系色は鎮静をもたらすと信じられていますが、それを裏付ける実験結果もあれば、否定する結果もあります。まったく効果がないわけではないが、いつでも、どこでも、誰にでもあるものではない…といったところが真実なのでしょう。
かし、色の効果に対する世の中の思いは実験室よりずっと積極的です。たとえば、青色灯は防犯のみならず自殺抑止にも効果があると期待され、JR東日本は山手線の全駅に青色LED灯を設置しました。また、陸上競技場のトラックにも青色が使われるようになりましたが(2009年にベルリンで開催された世界陸上の折に話題になりました)、こちらは競技者の集中力を高め、好記録を出しやすくする狙いがあるそうです。一方、対人場面では赤の人気が高まっており、赤をまとった女性はより魅力的に評価されるという実験結果も報告されています。またスポーツにおいては、個人競技(格闘技)でもチーム競技(サッカーなど)でも、赤いウェアは好成績に結びつくのだそうです。これらの色の効果がどこまで真実かを見極めるのはこれからの課題ですが、いずれにしても世の中がカラフルになっていくのは悪いことではありませんね。
(たかはし しんや)
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