環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 危険を回避すること

顔写真
都市環境学専攻 環境・安全マネジメント講座
西澤 泰彦 准教授
(建築史・技術史)
写真
手筒花火の底が抜けた瞬間。
花火の出し手(筆者)は火の粉と煙に包まれる。
出し手の足に注目、右足が前、左足を後ろに開く。
事で恐縮だが、自宅のある近所の神社のお祭りで、2001年から4年ほど、手筒花火を出した。手筒花火とは、竹でできた筒に火薬を詰め、その筒を脇に縦方向に抱えて出す花火である。豊橋や岡崎などの三河地方で盛んな花火である。花火屋から購入すれば、1発25,000円、出す時間は長くて1分、普通は40秒程度。時間単価を考えると、究極の出費(家族に言わせれば浪費)である。
ころが、一度やったら病みつきになる代物である。なぜかと言えば、危険極まりない花火だからだ。筒の先から火の粉が出ている光景は、遠くから見ればきれいだが、3、4mほどにあがった火の粉が、花火を持った出し手の頭や体に降り注ぐから、出し手はたまらない。当然、火傷を負う。そのほか、稀ではあるが、花火の暴発による大けが(運が悪ければ死に至る)、火を着けた瞬間に一気に燃えてしまうことや、燃え終りの時に筒の底が抜け、骨折や火傷を負うこともある。それは危険極まりない花火である。ところが、それを一度経験すると、身を持って危険を回避することを覚え、それが快感になる。
えば、降りかかる火の粉は実に熱いから、当然、木綿の法被を着て、体を覆う。乾いた木綿は簡単には燃えないから、少しは安全である。しかし、手袋は使わない。花火の勢いが強いと、手が滑って筒を落とす危険があるから、必ず素手で持つ。また、花火が終わるときには、筒の底が意図的に抜け落ちるように出来ているが、その勢いは半端ではなく、それが足に当たれば、普通は骨折。地面に跳ね返った部材(跳ね、ハネ)に当たっても衝撃は大きい。そこで、右利きの人が右脇に筒を抱える場合、右足を間に出し、左足を後ろに下げた状態で花火を出すことで、足の甲にハネが直撃するのを防ぐ(写真参照)。
するに、一つ一つは単純な行動なのだが、危険を回避する理屈に沿って確実にそれを行えば、危険は極力減り、花火を楽しんで出すことができる。私は手筒花火を出したことによって、危険を回避するもっとも基本的なことを学んだと思う。
(にしざわ・やすひこ)
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