環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 環境情報と消費者行動

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社会環境学専攻経済環境論講座
准教授 中野牧子
(環境経済学)

近、新聞で商品に二酸化炭素の排出量を表示するための検討を始めるという記事が掲載されていました。商品をつくる過程で排出した温暖化ガスの量を商品ごとに表示する制度の普及に向けて経済産業省と民間企業が取り組みを始める、というものです。(日本経済新聞2008年5月8日朝刊)
れはとても興味深い取り組みです。私達は買物をする際に、パソコンを買う場合にはスペックなどを確認し、お菓子を買う場合には原材料や栄養成分表示などを確認してから買っています。こうした表示と比べると、環境についての表示はあまり行われていないのが現状です。規格としては、第三者認証による環境ラベルで、「ちきゅうにやさしい」という言葉で知られる「エコマーク」や、事業者の自己宣言による環境ラベル、環境負荷の定量的データの表示があります。現状では見かける頻度がそれほど高いとは言えませんが、こうしたラベルによって、消費者に商品の環境情報を知ってもらうことは、「環境にやさしい」商品を購入してもらう上で重要なことだと考えられます。
すが、情報の伝え方はこうしたラベルによるものだけではありません。買物をする際に誰もがチェックをする価格には、実は生産にかかる費用という重要な情報が含まれています。しかし、その商品の生産等によって引き起こされる環境問題によって社会が被る費用は、今の日本では、価格にほとんど反映されていないと考えられます。多くの商品は、私達が目にする価格以上に、本当はもっと高くついているのです。こうした費用を、例えば環境税や排出量取引等の政策によって、価格に反映させることで、その商品が社会にもたらしている費用を消費者に伝える必要があります。
ぜなら、環境問題は今ではすべての人に考えてもらわなければならないところまで来ていますが、実際には環境問題に関心のある人もいれば、ない人もいるからです。また、関心のある人も忙しい場合などはうっかり環境ラベルをチェックするのを忘れるかもしれません。しかし、価格であれば、チェックをしない人はいません。この価格に環境問題をリンクさせることができれば、ずいぶんと多くの人に、環境問題を特に意識せずとも、環境に配慮した行動をとってもらうことができます。
上のように、環境情報の伝え方にも、いろいろなものがあります。こうした情報を活用して、環境に配慮した行動をとりやすい社会を作っていく必要があります。

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