環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 隕石を通して見た環境学

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地球環境科学専攻地球惑星科学系
准教授 三村 耕一
(地球化学)

般に“環境学”というと、“人と密接に関係している環境(自然環境,生活環境など)を研究する学問”と思われる方が多いのではないでしょうか。しかし,私は環境学を“人類よりはるかに長い歴史を持つ宇宙や地球がたどってきた環境を科学の目で明らかにすること”ととらえています。このように考えるのは,学生時代からずっと地球惑星科学を研究してきたからかもしれません。そして,今一番興味を持っているのは,太陽系ができはじめてから地球に生命が現れるまでの宇宙や地球の環境です。
の研究テーマは,「隕石や隕石に含まれる有機物はどのようにしてつくられ,どのような環境を経験したのか?」を探ることです。隕石は宇宙から地球にやって来る物体で,目に見えないような小さなものから、恐竜を絶滅させたかもしれないような巨大なものまで様々です。これら隕石の中には,炭素質隕石と呼ばれる,真っ黒で,たくさんの炭素を含む隕石があります。この隕石は太陽系の誕生や進化についての情報を持っていると同時に,多種多様な有機物を含むことでも有名です。この有機物にはアミノ酸やリン酸などの生命活動に必要不可欠な有機物も含まれているため,それらが地球生命の起源物質であったと考える科学者もいます。私たちの身の回りの自然界では,有機物というと生物活動によって作られたものがほとんどです。しかし,隕石は宇宙から飛来したものですから,そこに存在する有機物は生物活動とは無縁の環境で無機的に作られたもの,ということになります。(ただし,これは,隕石中に宇宙生物がいなければの話ですが....。実は、宇宙のどこかに高度な文明を持つ生物が存在して,地球に生命体を送り込んでいると主張する著名な科学者もいます。たとえば,DNAの構造決定でノーベル賞を受賞した故クリック博士は,そう考えていたようです。)
在,私は炭素質隕石を煮たり(加水加熱実験)、焼いたり(熱分解実験)、たたいたり(衝撃実験)して、その特徴を調べています。これによってどんなことが明らかになるでしょうか?隕石と向き合いつつ,過去の宇宙や地球の環境に思いをはせる毎日です。
(みむらこういち)

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マーチソン隕石(1969年,オーストラリアに落下した炭素質隕石)。マーチソン隕石の内部は黒く,全体に白い粒子が点在している。また,外部は黒い“皮”のようなもので覆われている(表面のうす茶色の部分は,落下時に付着した地球の土壌)。この皮は,地球に落ちる際に隕石が空気との摩擦によって溶けてできたもの。(Courtesy of Mr. Strope)

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マーチソン隕石から抽出された有機物(無色透明の溶媒に溶かした状態)。この中には,アミノ酸をはじめとする多種多様な有機物が含まれている。これらが地球生命体の原料となったのかもしれない。

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