環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

Home > トピックス

  “原因論に一石” −岩手・宮城内陸地震震源域に活断層を発見−

 地表地震断層の発見

2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震は、従来、活断層がないとされていた場所(活断層空白域)に起きたため、その原因論において様々な議論がなされている。マスコミは「未知の活断層」と評する一方、「数百万年間活動していなかった古い地質断層が起こした」という見解も聞かれる。
 名古屋大学・東洋大学・弘前大学の共同研究グループは、地震当日に現地に入り、震源となった地下深部の断層(=震源断層)が地表に現れているか否かを調査した。道路に明瞭な破断が現れた箇所については東北大学や産総研が地震当日には発見し、テレビ報道されたが、震源断層の性状と必ずしも一致しないものもあった。
 我々の研究グループは、既に報告されている地表断層よりも70m東側の地点で、水田面が西側上がりに緩やかに隆起していることを見出し、これが震源断層の動きに伴う本質的な変動である可能性があると推定した。

 

 見過ごされていた活断層

議論の焦点は、この地域における活断層(=最近の地質時代に繰り返し活動した断層)の存否と、今回の地震がその再活動によるものであったかどうかである。
一般に活断層は、航空写真を詳細に判読して、過去の断層活動の証拠となる地形を探すことにより見出される。活断層分布図作りは、1970〜90年代に4万分の1の航空写真を用い、研究者有志によって全国的に行われたが、最近では1万分の1程度の大縮尺の航空写真によりさらに詳細な調査が行われ、新たな活断層の発見も相次いでいる。しかし、全国を網羅する形では行われておらず、今回の震源域周辺も未調査だった。
今回、地震前(1976年)に撮影された航空写真を判読した結果、活断層変位地形が分布することが判明した。上述のような、水田を変位させるような活断層も事前に認定可能であった可能性がある。変位が累積した地形もあるため、これはいわゆる活断層であり、従来は詳細調査が実施されていなかったため、活断層空白域とされてきたと考えられる。
今回の地震の余震分布は、北方に位置する「北上低地西縁断層帯」の南端部にも及んでいる。このため北上低地西縁断層の延長部で起きたと理解することができる。しかし今回の震源域は火山地帯であるため、大規模な地震を起こす活断層は形成されないというのが従来の学説であった。今回の活断層の発見はこうした考えを見直す上でも重要である。

詳細は地震火山・防災研究センターのホームページをご覧ください。