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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

“環境問題”ではない環境問題について

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都市環境学専攻 2005年博士後期課程修了
愛媛大学 客員教授
陳 寧

私は2001年4月に新設された名古屋大学環境学研究科の博士前期課程へ入学して、“環境学”の修士学位第一号を取得しました。環境学研究科の授業では、学問や分野により“環境”という言葉がいろいろな意味をもつことを学んでいました。ここで、通常の“環境問題”ではない環境問題についてお話したいと思います。
私は2011年から、名古屋大学の環境安全衛生室やシンガポール国立大学のOffice of Safety, Health & Environmentで大学の環境・安全・衛生に関わる管理の仕事をしていました。実験室の廃棄物の管理、排水管理、PRTR制度に基づく化学物質の管理は、“環境”と密接な関係があり、環境保全には不可欠だと思います。一方、安全衛生の管理の一環として、大学の研究室の安全に関わる作業環境(“労働環境”の一種)は“環境問題”から除かれています。考えてみると、化学物質、粉塵、におい、騒音などは皆さんがよくご存知の環境問題の原因でありながら、研究室内で発生した場合、研究者の安全と健康に直接影響を及ぼす“作業環境”であることは見過ごされやすいようです。しかし、研究室内に起こる“マイクロ環境問題”について研究者自身が気づいたら、研究内容の変更や実験操作の改善などによって問題解決できることが多いのです。
“作業環境”に関連して、私は名大在任中に環境学研究科で「環境リスク論」という授業を担当し、環境マネジメントシステムと労働安全マネジメントシステムについて大学院生に紹介していました。この授業を受講した学生さんは“環境”の定義をより深く考え始めてくれました。学生さんの“作業環境”との関わりは在学中に限らず、これから何十年も職場の“環境問題”に対処する必要があると考えられます。そこで今後、自分と周囲の安全と健康に直接影響を与える“職場の作業環境”に関する知識を身につけてもらえたら幸いと思いました。
大学の環境安全衛生管理の仕事を通して、一人でも多くの学生や研究者の方に、自分と周囲の安全と健康のため、改めて研究室の環境問題の重要性に気づき、問題点を改善できたら嬉しいです。卒業生の皆さんが安全な職場で健康に気をつけて働けることを祈っています。
(ちん ねい)
* PRTRとはPollutant Release and Transfer Register(環境汚染物質排出・移動・登録)の略称であり、化学物質排出移動量届出制度、環境汚染物質排出移動登録制度などと訳されている。

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