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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生ががそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

草原の国「モンゴル」の環境汚染

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地球環境科学専攻 地球化学講座
山本 鋼志 教授
本教員のプロフィール

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私が使っているパスポートを見ると,2009年以降,モンゴル国への入出国が13回となっています。なんと足繁く通っていることでしょうか!
モンゴルと言えば「草原の国」であり,自然に囲まれたゲルの中で,相撲好きの人々がノンビリと暮らしているイメージがあります。しかし,ウランバートル郊外の鉱床地域では,金属資源採掘のために地面が掘り起こされ,不要となったズリが堆く積み上げられている光景を目にすることができます。そうです,モンゴルの最も主要な産業は鉱業で,石炭・銅・タングステン・金など多くの鉱物資源がモンゴル国には埋もれています。また,1900年代には金の採掘に水銀を用いたアマルガム法が不法採掘者(ニンジャ)により行われていました。従って,鉱山地域では金属元素汚染が深刻な問題です。
一方,モンゴル国の人口312万人(2006年)の約半数140万人が暮らす首都ウランバートルでは,冬期の大気汚染が深刻な状態にあり,それを原因とする呼吸器疾患が蔓延しています。大気汚染の原因としては,火力発電,ゲル地域での採暖・調理のための色々な物の燃焼,そして過密な交通車両からの排ガスなどが考えられています。特に,1月の平均最高気温は-16℃,最低気温は-27℃となり,採暖のための石炭の燃焼は欠くことができません。
私の専門は「地球化学・環境化学」で,これらの環境汚染の実態を,鉱山周辺の堆積物や河川水,ウランバートルの大気粉塵の化学分析を通じて「定量的」に明らかにすることを目的としてモンゴル国へ通っています。ボロー金山周辺の堆積物には,いまだに高濃度の水銀が含まれていますし,河川水では世界保健機構の安全基準を超えるヒ素が検出されています。また,ウランバートルの大気粉塵には,ヒ素や鉛などの有害金属元素のみでなく,発がん性を示す有機化合物が高濃度に含まれていることが明らかになってきました。退職までにこれらの結果をまとめ,モンゴルで発表の機会を得て,多少なりとも恩返しができればと考えています。
(やまもと こうし)

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