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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

「はやぶさ2」と小惑星の環境学

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地球環境科学専攻 地球惑星物理学講座
諸田 智克 講師
本教員のプロフィール

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小惑星リュウグウ表面にタッチダウンする
「はやぶさ2」の想像図(イラスト:池下章裕氏)
小惑星探査機「はやぶさ2」が探査目的としている小惑星リュウグウに近づいてきました。2018年2月に「はやぶさ2」に搭載された光学航法カメラがリュウグウの撮像に成功しています。私は光学航法カメラのサイエンスチームの一員として、観測計画の策定やデータ解析を担当しています。
リュウグウはC型小惑星に分類されており、はやぶさ初号機が探査したS型小惑星イトカワよりも始原的な天体で、有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられています。「はやぶさ2」はそのリュウグウからサンプルを持ち帰ることを目的としています。そしてそのサンプルの詳細分析から、太陽系初期の小天体内部で有機物と水、鉱物がどのように相互作用し、共存してきたか(「小惑星の環境学」と勝手に呼びます)、を明らかにすることで、地球の水や生命の起源に迫ることを目指しています。
微小なスケールのサンプルの分析から、太陽系スケールの情報を読み解くには、サンプルの物質科学的な情報だけでなく、リュウグウにおけるサンプル採取地点の地質学的位置付け、さらにはリュウグウが太陽系のどこで誕生し、どのような力学的進化を辿って現在の姿になったのか、といったマルチスケールの進化過程の理解が重要となってきます。光学航法カメラはその名の通り探査機のナビゲーションを担うカメラでありますが、多バンドの分光観測によって、サンプル採取地点の選定や記載、小惑星の地質史復元にも中心的な役割を果たし、まさに「はやぶさ2」が切り開く「小惑星の環境学」の主役とも言える観測機器です。
今年夏、「はやぶさ2」はリュウグウに到着し、1年半をかけてリモートセンシング観測とサンプル採取を行います。観測計画の詳細化やデータ処理システムの完成など、到着までに行うべきことはまだまだ残されています。万全の状態でリュウグウと出会うための準備を我々は進めているところです。
(もろた ともかつ)

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