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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生ががそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

ゲノム編集で環境をデザインする?

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社会環境学専攻 社会学講座
立川 雅司 教授
本教員のプロフィール

最近、農業・食品分野へのゲノム編集の応用に関して、その規制上の位置づけなどを調査しています。最近、アメリカを訪問する機会がありましたが、ゲノム編集の応用領域として、ジーンドライブに大きな関心が寄せられていました。ジーンドライブとは、ゲノム編集を行う機構自体をDNAに組み込み、特定の遺伝子を集団内に拡散させていく技術です。特に、疾病を媒介する昆虫や、農作物に被害をもたらす昆虫をジーンドライブにより駆除する取り組みなどが注目されています。これまでの農業技術では、害虫駆除のために、農薬を使用したり、作物を遺伝子組換えし、害虫抵抗性を付与したりという対策をとってきましたが、ジーンドライブでは、害虫自体のDNAを組換えてその駆除をめざします。
この考えを拡張すれば、環境中に存在する生物がDNAをもつものである限り、様々な生物のDNAに対してゲノム編集を行うことで、人間が設定した目的を達成するための最適化を図ろうという介入が今後拡大していくことが想定されます。環境に存在する植物、動物、微生物はすべてDNAを有していますので、これらのどのDNAに着目し、改変することで、目的を達成できるのか、広く検討できる選択肢が格段に広がったといえます。
こうしたゲノム編集による環境への全般的な応用は、ガバナンスや公正などの観点から、様々な論争を生みだすことになると思われます。こうした予感があって、アメリカではジーンドライブが社会科学も含めて広く注目されていると考えられます。ジーンドライブは、対象とした生物に対して不可逆的な変化をもたらします。また生物に対する機械論的理解を、生態系全体に拡張し、人間の目的に沿った改変を持ち込むことで、自然を所与なものというより、デザインできる対象と理解する考え方をもたらすかも知れません。デザイナーベビーの環境版ということもできます。こうした現象が進むことに対して、筆者の専門である社会学の観点からどのような貢献ができるか、今後の課題としたいと考えています。
(たちかわ まさし)

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