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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

都市計画と環境学

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都市環境学専攻 建築学系
宮脇 勝 准教授
 (都市計画)
本教員のプロフィール

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新国立競技場の工事現場(手前)と
富士山の景観
私の主な研究は、環境に配慮した都市計画や景観です。今やっている仕事は、日本のプライドをかけた新国立競技場という東京オリンピックのメイン会場のデザインについてで、会場から誰もが世界遺産の富士山を眺めることができ、会場が明治神宮外苑の緑に包まれるように、渋谷区の景観審査会会長として協議を行っているところです。
学生時代に、イタリアへ留学した際に、都市や景観の全体的な美しさに魅了されました。日本だと、ついつい細かいことの方に目が向いてしまい、都市の環境全体を見なくなってしまいます。しかし、西洋社会では個々の部分差よりも、環境の物的な姿、全体の姿の方に強い関心を持っていることを知りました。
環境とは何かを、部分からではなく、全体から知ろうとするきっかけを海外で得ることができ、景観学や環境学への関心が湧きました。そして最近は、「環境の意味」を追求するようになってきました。そこでは、日本にはまだ十分知られていない、そして、まだ認められていない「環境権」の存在も海外で知りました。「環境権」とは新しい人権として、市民の知る権利、都市計画や景観、あるいは地球環境問題や災害復興など、あらゆる環境に関わる計画に影響する基本的な存在になるものであり、日本に無いものなので、研究を試みています。
また、欧州ランドスケープ条約という国際的な取り組みの中で、「景観の特徴は、自然の作用や人間の行為の結果の有様である」という定義を知り、身の回りの物的な姿となって表れている「結果」が重要であることを再確認しました。どんな個々の理由があろうとも、日本の都市の姿は、「全体の結果」として健全なのか、客観的かつ国際的に俯瞰しながら、徐々に改善を図ることが重要と思います。
現在、観光を通じて日本の国際化が進んでいます。外から日本が見られるようになって、初めて自分たちの環境を意識するようになってきました。これからは、国際的な感覚を持って地域の環境を読むことで、日本の都市のアイデンティティを国際的に説明できるようにし、日本の物的環境をより良くする結果をもたらしたいと考えています。
(みやわき まさる)

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