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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

コンクリーションと環境学

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博物館(地球環境科学専攻 地球史学講座)
吉田 英一 教授
 (環境地質学)
本教員のプロフィール

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皆さんは球状コンクリーションというものをご存知でしょうか。地層の中に「卵」のように埋まっている、炭酸カルシウムを主成分とする丸い岩塊です。アンモナイトなどの化石に興味のある人であれば、おそらくどこかで見たり聞いたりしたことが必ずあるはずです。その理由は、この球体の中には、非常に保存良好な化石が含まれることがあるからです。ですが、なぜ、このような球体になるのか。なぜ、内部に保存良好な化石が含まれるのか、など、ほとんど分かっていませんでした。ところが、今回、約2000万年前の地層から出てきた、まるでクワイのようなツノガイの化石の口の周りにできたコンクリーションを調べることで、非常に早い速度で形成されることがわかってきました。ちなにみ、2〜3センチサイズのツノガイコンクリーションでは数週間程度で、またメートルサイズでも数年程度の可能性が出てきたのです。そして、ツノガイの貝殻の保存状態は非常に良好で、アラゴナイトのまま維持されていたのです。
なぜ、2000万年もの間、しっかり保存されていたでしょうか。詳細にしらべると、コンクリーション中では、炭酸カルシウムがしっかりと地層の隙間を充填・シーリングし、その後の反応を遮断し、タイムカプセルのように保存してきたことが分かってきました。
現在、このような長期的なシーリングプロセスとその効果を応用できないか、と調査と実験を環境学研究科のメンバーと共同で進めています。もし、コンクリーションのようなシーリング作用が再現できれば、石油や天然ガスの地下備蓄や地下廃棄物処分、あるいはリニアなどの長大なトンネルなど、地下空間の長期的なメンテナンスフリーの維持技術に応用できるかもしれません。また、同様のコンクリーションが火星の地層にも存在し、火星の大気形成にも関わっている可能性も出てきました。地球のコンクリーションが、火星のアナログとなるかもしれません。これらコンクリーションの展示を来年(平成29年)名大博物館でも予定していますので、ご興味のある方は是非お越し下さい。
(よしだ ひでかず)

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