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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

国土デザイン学

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持続的共発展教育研究センター(都市環境学専攻空間・物質系兼任)
富田 孝史 教授
 (国土デザイン)
本教員のプロフィール

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東日本大震災の都市の被災例(大船渡市)
2016年4月1日に名古屋大学に着任しました。それ以前は、国土交通省所管の国立研究開発法人港湾空港技術研究所において、津波や高潮という海からの脅威による災害を防除・軽減するための研究開発を行っていました。それに関連して、国、県そして市の各レベルにおける防災への取り組みにも幾つか触れる機会がありました。名古屋大学で、この経験を「国土デザイン学」の発展につなげたいと思っています。
日本は、その地理的条件から毎年どこかで地震、台風など自然の強大な力による災害が発生しています。発展途上国では国家の危機につながるような自然災害が発生しています。しかし、生態系という大きな枠組みを別にすれば、自然の大きな力が作用してもそこに人間活動がなければ災害につながりません。すなわち災害は自然の力と人間活動との関係性のなかで発生します。
日本ではその人間活動に変化が生じています。人口減少、少子高齢化、都市への人口集中と地方の過疎化などです。さらに、国民皆が経済発展に向かって走っていた成長社会から成熟社会に移行し、多様性や質の高さが求められるようになってきました。発展途上国ではインフラ(社会の基盤をなす構造物やシステム)不足による災害の甚大化が経済成長や生活の質の向上の妨げになっています。これからの国や地域づくりでは、予想される自然の力に対する安全・安心性の向上に加え、その国や地域の社会的・経済的な特性を踏まえて、生活レベルの維持や向上、環境へのやさしさ、予算などを総合的に考えなければなりません。逆に、よりよい社会に誘導できるような国や地域づくりが必要とも言えます。
人間世界をとりまく自然・社会・経済の関わりのなかで、これから30年後さらにその先を見据えて、魅力的で持続可能な国土の形成をめざすのが国土デザイン学です。そこには工学、理学、人文社会科学など多くの学問分野から知恵を結集する必要があります。国土デザイン学のキーワードは、自然、社会、経済そして人間です。
(とみた たかし)

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