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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

街の個性

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都市環境科学専攻 2011年修了
木戸 広太

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私は現在カナダのトロントに住んでいます。オンタリオ州の州都で人口およそ260万人のトロントは、多くの移民により構成される国際色の豊かさから人種のモザイクといわれています。私はこの街に留学した事をきっかけとして、環境学研究科を修了後に現地の建築設計事務所に就職し約4年半が経ちました。
私が勤めるのは教会建築の改修物件を多く手がける事務所で、日本では馴染みのなかった文化や技術に触れる機会も多くあり、貴重な経験をすることができました。一番印象深いのは一年半ほど前に竣工した、国の文化財に指定されている教会の改修プロジェクトです。1860年代に建てられたゴシックリバイバル様式の教会が持つ歴史的価値に配慮しつつ、施主が求める意匠や機能の要求を満たす事ができました。写真は竣工後に行われたAltar Dedicationという、カトリック教会を改修した際に行われる儀式に参加した時のものです。
日々の生活や仕事を通して、建築、自然環境、文化や制度など様々な要素によって都市環境が形成されていることを再認識しています。私が魅力を感じるトロントの街の個性の一つとして、古い建物が多く残り、増改築を繰り返しながら人々に活用されている事が挙げられます。トロントでは自治体による歴史的建造物の登録制度があり、およそ9000件の建物が文化財、または文化財候補として登録されています。対象建造物の改修、取り壊しについては特別な審査が要求されるほか、保存にかかる費用の補助金制度もあります。また、地震が起きにくい地理条件にあるため、日本のように地震が多い国に比べて技術的な制約が少なく建物を保存しやすいこともあるのでしょう。その他、様々な要素が積みかさなった結果、高層開発が盛んな一方で、街の変化の痕跡が各所に感じられる街になっているのだと思います。
私はこの数年間で、生まれ育った名古屋とは大きく異なるトロントという街の色々な個性を肌で感じることができました。今後は日本に戻り日本の企業で働く予定ですが、これまでの経験を生かし個性のある都市環境作りに貢献していきたいと思います。

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