ホーム > 環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

環境放射能の教育・研究に関して

顔写真

地球環境科学専攻 地球惑星科学系
日高 洋 教授
本教員のプロフィール

写真
オクロ・ウラン鉱床
本年3月1日付けで環境学研究科に着任いたしました。私のこれまでの環境学に関する教育の一つとして、前職・広島大学において、学部3年生を対象とした学生実験の課題の中で、十数年にわたり環境放射能に関する実験を実施していました。ベータ線とガンマ線の検出が可能な簡易計測器を用いて、放射線の強度と線源からの距離との関係や放射線を遮蔽する物質などの性質に関する室内実験を行い、引き続いて、身近にある食材や天然の岩石・鉱物でも検出できるほどの放射能を持っているものがあることを確認してもらい、最後に計測器を携帯してキャンパス内を散策し、いくつか目ぼしい地点で実測してもらうという内容でした。学内には風化した花こう岩の露頭が現れている場所など、計測するには適している地点がいくつかありました。
放射線計測に用いられるマイクロシーベルト(μSv)という単位は、生体が放射線を受けた際の影響を示す線量当量ですが、これを実験の開始前に説明しても以前は、関心を示す学生は多くはありませんでした。むしろ、放射線量を表す単位として以前に用いられていたレントゲン(R)、放射能の単位として従来使用されていたキュリー(Ci)、現在使用されているベクレル(Bq)などはすべて著名なノーベル賞受賞者に由来する名称であるため、これらの単位の方がなじみやすいようでした。それが、東日本震災に伴う福島での原発事故が発生以降、環境放射能汚染の報道が多くなされることで、奇しくもより身近な単位として受け入れられるようになり、実験開始前の説明の際にも多くの受講生が関心を持つようになりました。本学でも何らかの機会にこれらの実習を実施してみようと思っています。
本業(研究)では、天然原子炉として知られるアフリカ・ガボン共和国東部のオクロ・ウラン鉱床(添付写真)を対象に、核分裂によって生成された元素が鉱床内外にどのように散逸していったかの挙動解析をしていましたが、同鉱床の閉山に伴い、プロジェクトも終えてしまいました。今では大気に覆われていない惑星物質表面に宇宙線が照射されて生じる相互作用について分析する、宇宙環境に関する研究などを実施しています。
(ひだか ひろし)

PAGE TOP