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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

「私のフィールド古生物学の新展開」

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博物館(地球環境科学専攻 地史学講座)
大路 樹生 教授
本教員のプロフィール

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約5年前に名古屋大学に着任してから、私の研究は大きく変化しました。私の研究は海洋動物学と古生物学に分類されるのですが、主としてフィールドワークや標本に基づく自然史学的研究を行ってきました。特に最近は動物進化史の中で最も大きなテーマである、カンブリア紀の動物の爆発的種分化、多様化というテーマ(「カンブリア爆発」と言います)へのチャレンジを開始し、共同研究者と共にカナダ、アメリカ、中国を中心として研究を進めてきました。しかしこのテーマは欧米、中国の多くの古生物学者がすでに取り組んでおり、新たな展開を見出すことがかなり困難に思えました。私のような「新参者」が新たに入り込むニッチすら空いていないように思いました。
名古屋大学博物館はモンゴルにフィールドリサーチセンター(FRC)を持っています。FRCを通じて、モンゴル科学技術大学の研究者と交流を開始することができました。そのうちに、モンゴル西部に、私が最も興味を持っている時代であるカンブリア紀とその前時代であるエディアカラ紀の地層が広く分布し、古生物学的な証拠も豊富であること、しかもこれらはあまり研究されていないことが分かってきました。それ以降、毎年モンゴルの調査に出かけ、エディアカラ紀後期、カンブリア紀初期の生命進化に関する証拠を集め、新知見を次々と見出すことができました。これらも名古屋大学に着任する前は思いもよらないことでした。
博物館は大学内で行われた研究資料や教育用標本・資料の保管、展示、実習等への便宜を図る事の他、大学の中で一般の市民との接点を持つ、言うなれば大学の「顔」とも言うべき存在です。大学で行われた、あるいは行われている研究を分かりやすく紹介し、市民の方々に理解をして頂く、またこれからの日本を支える若い方々に研究の面白さを伝えることができれば、研究者として別の一面で大きな貢献ができるのでは、と思っています。
(おおじ たつお)

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