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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

「名古屋」のまちづくりと持続可能性

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社会環境学専攻 社会学講座
河村 則行 准教授
本教員のプロフィール

私の専門は社会学で、現在、東海社会学会の庶務理事を担当しています。今年度の学会大会シンポジウムのテーマは「『まち』と『縁』の創造-人口減少社会を視野に入れて-」で、名古屋市の三つの地区の興味深い事例報告がありました。第一に、商店街の空き店舗を子育て支援の拠点施設として活用するNPO法人「まめっこ」。第二に、高度な医療機関として新病院を移築するなかで、組合員の班活動が地域を支え、医療・看護・福祉の包括的ケアの構築をめざす南医療生協協同組合。第三に、移民労働としてフィリピン人が増加する空間で、公園の清掃活動など地元の日本人と共同でまちづくりに取り組んだ栄東地区。ここで共通していることは多様な主体が地域コミュニティに関わり、地域課題の解決を目指していることです(東海社会学会年報第8号、2016年7月発刊予定)。
グローバル化や人口減少のもとで都市空間・まちの再編が進んでいますが、行政がいくらハードな公共施設を整備しても、地域住民の関心がなければ、利用されずに放置されてしまいます。地域の資源をどのように活用し、誰が維持管理していくのか、このようなソフトの活動では行政のみでは限界があります。このような状況では、まちの再編を規定する一つの要因として、コミュニティ構造やソーシャル・キャピタル(社会的絆)の力が重要であると考えています。コミュニティ論では、マッキーヴァーやクーリー以来社会学には膨大な蓄積があり、社会学が大いに貢献できる分野です。従来の町内会・自治会などの包括的な地縁型組織に加えて、地域課題が多様化、複雑化していくなかで、防災、環境、福祉などをテーマとするテーマ型組織が台頭しています。
名古屋都市圏は、東京と大阪とならぶ三大都市圏の一つですが、第一に、自動車、工作機械など製造業の国際競争力が強く、人口の増減は小さく一定の人口量を維持してきたこと、第二に、「大いなる田舎」と呼ばれ、地縁型組織が強くテーマ型組織の数が少ないこと、に特徴があります。
都市圏の再編が進むなかで、地縁型組織の活動は衰退し、テーマ型組織の活動が活発になるのか、あるいは両者の連携が進み、ハイブリッド型の組織になるのか、そして、そのソーシャル・キャピタルやコミュニティの組織のあり方が、地域の持続可能性、レジリエンスにどのような影響を及ぼすのか、名古屋都市圏を事例に調査、研究を進めています。
(かわむら のりゆき)

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