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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

道路と利用者を見つめて

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持続的共発展教育研究センター
後藤 梓 助教
  (交通工学・交通計画)
本教員のプロフィール

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「制限速度を守っていては、周りの交通の流れに合わせられません!!どうしたらいいんですか!?」自動車学校で路上教習を始めたばかりの頃、助手席の教官に投げかけた言葉です。その他にも、黄信号で止まることの無い車、横断歩道で歩行者に譲らない車、…世間には交通ルールを守らない車のなんと多いことかと愕然としていました。
それから暫くして交通工学という学問に出会いました。人々が交通ルールを守らないのはマナーが悪いからだけではない、目から鱗でした。例えば、制限速度を超過してしまうのは、それでも大丈夫と運転者が認識するような道路の構造だから、黄信号で止まらないのは、止まってしまうと次の青信号になるまで随分待たないといけないから…。個人の判断に依ると思っていた行動は、実は道路の線形や障害物、標示、信号制御など、様々な要因によって影響されていると知りました。もちろん個人差はあるものの、危険挙動が起こりやすい場所には、それなりの原因があります。言い換えると、道路の計画・設計・運用方法を工夫すれば、より安全・円滑・快適な利用者挙動を誘導できるはずということです。それを信じて、どのように道路を計画したらよいか、利用者挙動は何から影響を受けるのかなどを研究しています。
「環境」とは私達を取り巻く周りの状況すべてを指す、とても広い意味の言葉です。にもかかわらず(だからこそ?)、多くの人にとって「環境」は見えているけれど見ていない、当たり前過ぎて意識しないものではないでしょうか。道路交通もその一つだと思います。私にとっての「環境学」は、そんな「当たり前」を見つめ直し、工夫を凝らすことで、人々の行動に働きかけ、さらに良い環境へと還元する事です。
本当に良いデザインは周囲に溶け込んでいて気づかれないものである、と聞いた事があります。道路利用者一人一人は、自身にとって自然な行動をとっただけなのに、それが結果として、他の道路利用者や周辺住民にとっても望ましく、安全・円滑・快適な交通に寄与するようになっていたら、とてもカッコいいと思うのです。                    
(ごとう あずさ)

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