環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 道路交通の機能改善とまちづくり・国づくり

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都市環境学専攻 空間・物質系
中村 英樹 教授
(交通工学・国土計画)
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来,たとえすべての自動車が燃料電池車になろうとも,走行の自動化が進もうとも,旅客や貨物の陸上輸送が必要である限り,道路は社会経済活動や日常生活に欠かすことのできないインフラストラクチャーです.近年になって,日本の道路の整備もかなり進んできましたが,混雑や交通事故,環境の問題は依然として解決されていません.一方,今後の人口減少・高齢化社会において,インフラ維持管理をやって行けるのかや,どのようにして持続可能なまちづくり・国づくりをして行くのかも問われています.
本が目指すべき国土の有力な将来像として,地域の拠点に機能を集約したコンパクトなまちづくりと,これらの拠点を効率的にネットワークで連絡することを組み合わせた,「コンパクト+ネットワーク」の考え方があります.ドイツなどでは古くからこれを実践していますが,日本政府からもこの方針が最近公表されました.その実現には,国土の土地利用政策だけではなく,「どこの道路をどのように造り込むか」といった,道路の計画論と道路構造設計が大きな役割を果たすと考えています.
ンパクトな拠点では,道路はそこで生活する市民や来街者が安心して過ごすことができる,魅力的で活気ある空間でなければなりません.一方,これらの拠点の間を結ぶ道路は,安全で信頼性が高く,ストレスフリーで移動する機能を重視したものでなければなりません.道路をはじめとする交通施設は,立地を誘導する機能を持っていますので,これを巧みに利用して人口減少社会での持続可能なまちづくり・国づくりに活かして行くことができるはずです.言い換えれば,求められる機能に応じて道路の設計や交通の運用方法に差別化の工夫が必要であり,道路の機能に応じた「造り方」にメリハリをつけた機能更新を行っていくことが求められていると考えています.
路交通法も改正されて,日本でも本格的な普及が期待されている安全でエコなラウンドアバウトについても,上記のようなまちづくり・国づくりに向けて必要となる道路交通の機能改善のための一つの部品として,長らく研究を続け実現に結びついたところです.ラウンドアバウトはあくまでも一例に過ぎず,今後も上記の理想に近づくために必要な,道路交通の機能改善に関する研究に取り組んでいきます.
(なかむら ひでき)
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