環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 生きている都市と資源利用

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都市環境学専攻 地圏空間環境学講座
奥岡 桂次郎 助教
(環境システム工学,都市経済学)
たちが暮らしている都市環境では,過剰な人口集中による資源消費や,社会基盤の整備と維持管理に伴う廃棄物の発生など多くの問題を抱えています。これらの問題は,都市が多くの資源を消費・排出するメカニズムに起因します。都市も生きており,我々と同じように,資源を“食べ”て“排泄”するしており,成長・成熟し,いずれは衰退するといった新陳代謝をします。人間の健康に配慮した食事や運動があるように,持続可能な社会を構築するために,都市の成長による環境負荷を減らし,成熟した都市のあり方を考える必要があります。つまり,都市に投入される資源をできる限り少なくすると共に,排出をより多く循環利用することで,全体の資源利用を改善することが重要です。
が専門とする環境システム工学では,多様な側面を持つ環境を複合システムとして捉え,系(=システム)における相互作用をシンプルな仮定によりモデル化します。モデルにより,問題発生のメカニズムを明らかにして問題解決へ向けた方策を示すことができ,仮想空間の中で生きている都市をシミュレートすることで都市の新陳代謝を明らかにします。成熟した都市では,建築物や社会基盤などの構造物が多量に蓄積されており,着工と解体のサイクルが細胞の分裂・死亡のようにいたるところで発生しています。例えば日本では,高度経済成長期に建てられた構造物が老朽化し,その多くが解体されることで大量の排出が発生すると予測されています。これらの排出物が“ゴミ”として廃棄物にならないように循環利用する必要がありますが,人口減少により構造物の更新が少ないため,どこでどれだけ着工・解体するか,都市という“身体”に知らせることが重要です。情報がうまく伝われば,都市システムの中で資源循環が行われ,成熟にふさわしい効率の良い資源利用が可能です。
境という系は,自然と人間活動との関係から多様かつ複雑であり,私たちに見せる顔は,気候変動や災害といった畏怖の念で示される一方,食料やエネルギーといった資源や恵みをもたらし,一概に捉えることは困難です。今後は,利用可能な資源や土地の有限性などから,これまでのような資源利用のバランスでは持続可能性が低いことがわかってきました。将来世代のために,より効率的な都市の成長を促すと共に,成熟した都市を健全にするために,「生きている都市」の新陳代謝を計ることで資源利用の観点から持続可能な社会の実現に貢献できる研究を続けています。
(おくおか けいじろう)
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