環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 過去から学ぶ

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社会環境学専攻 地理学講座
服部 亜由未 助教
(歴史地理学)
朝、かまどでご飯を炊き、
出た灰は畑へ、消し炭は七輪や火鉢の燃料に、
畑では自家消費分の野菜をつくり、
料理で出た生ゴミは畑の堆肥に、
畑や庭木の、剪定した枝葉や落葉は良く乾燥させて、ご飯を炊く燃料にする……
うした生活は一昔前には多くの家庭で見られたものの、今ではあまり目に触れないことかもしれません。しかし、私事で恐縮ですが、上の生活を私の実家では今も続けています。小さい頃は、教科書で学ぶような「昔の生活」と似た生活に、一種の恥ずかしさもありました。しかし、環境学研究科で研究を進めていくにしたがって、続けてきたのには理由がある、と考えられるようになりました。その理由とは、家庭内でモノの循環が上手くいっているため、すなわち、一つを止めれば、上手くいっていた家庭内での循環が止まってしまうためです。簡単な例を一つ挙げましょう。かまどを使わず、スイッチ一つでご飯が炊ける炊飯器を使えば、労力は減る反面、燃料として使っていた落葉は使い道がなくなり、ゴミとして出す必要に迫られます。燃料となる資源が無用のゴミとなるのです。「環境学と私」を考えるにあたって、私は、一昔前には多くの家庭で見られたであろう、このかまどを中心とした家庭内循環型の生活を思い浮かべました。
代は急速に流れ、生活環境以外にも様々な変化が起こっています。こうした時代の流れにともなって、消えゆくもの、埋もれてしまうものの中に、大切なものまで忘れ去っていないでしょうか。もっとも、ここで言う「大切なもの」は人によって異なって良いと思います。先の事例に対し、疑問をもたれる方もいるかもしれません。私は、過去の地域や人々の活動について研究し、それぞれの人が大切なものを考える材料を提供していきたいと思っています。
を向いて歩むことはもちろん大切です。しかし、たまには後ろを振り返って考えてみても良いのではないでしょうか。古い事象、人々の活動には、懐かしさだけではなく、今の私たちにもヒントとなるものがあるはずです。
(はっとり あゆみ)
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