環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 耐震補強の重要性

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都市環境学専攻 建築構造システム講座
中村 聡宏 助教
(鉄筋コンクリート構造, 耐震工学)
震補強を専門とする自分にとっては,一昨年に発生した東北地方太平洋沖地震はとても衝撃的な出来事でした。原発の問題もあったため,発生から2ヶ月後に地震被害調査に行きました。津波被災地域は,まだまだ復興が進んでおらず,道沿いの瓦礫の山を目の当たりにすると,何とも言えない無力感に襲われました。しかし一方で,津波に耐えたのは鉄筋コンクリート構造だけということ,市街地での被害が震度の割にはそれほど深刻でないということは,高度な構造設計や耐震補強が効果的であることを示しており,自分の研究の重要さを改めて認識させられました。これから研究職で頑張ろうと意気込んでいる時に,東北地方太平洋沖地震の被害を目の当たりにしたことは,自分にとっては大きな意味があったと思います。
北地方太平洋沖地震以前では,私の研究の背景には1995年の兵庫県南部地震がありました。兵庫県南部地震の発生当時,私は小学校4年生でした。震度4の揺れで目が覚めたことは記憶していますが,まだまだ遊び盛りで将来のことも考えていない時期だったので,当時はそこまで深刻に受け止めていなかったです。研究職を意識し始めた頃には,当時の被害を写真や文章で知ることしか出来なかったため,今振り返れば,どこか現実味がなかったように思います。
存知の通り,近いうちに東海・東南海・南海地震が発生すると言われています。最近では,地震予知は現実的には不可能であるという報告がなされ,防災が重要であるということが再認識されました。耐震改修促進法も改正され,今までよりも更に多くの建物の耐震診断・改修が義務付けられます。また,これからの持続可能な社会の形成のためには,建物の老朽化から目を背けることはできません。このような背景もありますので,これからも,建物や都市の長寿命化の一助となるような耐震補強や耐震性能評価の研究に精進して行きたいと考えています。
(なかむら あきひろ)
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