環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 臨床環境学研修

顔写真
地球環境科学専攻 地球環境システム学講座
平野 恭弘 准教授
(樹木根生態学)
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松阪市飯高町における臨床環境学研修の様子
境学研究科に着任以来三年間,伊勢湾流域圏を対象とした臨床環境学研修という博士後期課程の学生実習に携わっています.「地域社会の現場でおきている持続可能性の問題点を自ら見つけ出し(診断),解決(治療)の糸口を提案する」という臨床環境学を実践する人材育成のためのカリキュラムです.臨床環境学は新しい学問でその実習に既存のマニュアルはありません.
ず初夏に2泊3日で対象地域の見学が行われます.河川,都市,交通,農村,森林,気象,地域社会など専門の異なる教員が,さらに行政や地域住民の人々が,目の前にする対象地域について様々視点から解説してくれるというなんとも贅沢な,異分野で構成されている環境学でしかできない授業です.異分野の教員が同時に解説をしてくれる授業が他にあるでしょうか?森林が専門である私も,同じ地域の様々な事象の説明を聞き観察することで,これまでに認識していない森林を取り巻く新たなつながりを知ることができるのです.地域環境の中で自分の専門研究の必要性が再認識できるのです.
地見学の後,専門の異なる博士後期課程の学生がチームを組み,一年かけて,地域における持続可能性の問題点を抽出し,解決の糸口を提案します.その間には,行政や地域住民の方々と会話を繰り返し,文献調査や科学的な調査解析を行います.普段,専門分野の研究をしている学生は,異分野の学生とチームを組んで話をすると言葉が通じない!地域住民の方に研究の説明が充分にできない!など数々の困難を迎えます.しかし,この過程で得られる説明力や会話力,人のつながり,統合的な視野を持った人材こそ,環境問題や持続可能性の問題の解決に取り組むことのできる人材になりうると思われます.研修を受けた学生の一年の成長は,最初に現地で住民の方々と会話した時と最後に現地で行われる報告会での説明や態度を見れば明らかで,目を見張るものがあります.
床環境学研修は,教員も学生も異分野構成で,そこで経験すること,得られることは,まさに新しい横断的学問を構築する過程を目の当たりにしているようです.教員,博士後期課程の学生さん,地域住民・行政の皆さん,是非一度,臨床環境学研修に参加してみませんか?
(ひらの やすひろ)
 本教員のプロフィール