環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 生物と無生物は協力し合って環境を作り上げる

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地球環境科学専攻 地球水循環科学講座
熊谷 朝臣 准教授         
(生物環境物理学、生態水文学)
1960年代、ガイア仮説を発表した当初、生命体が地球の気候と大気中の化学組成を自分たちの生存に最適な状態に調節しているという考え方は、地球科学者にも生物学者にも受け入れ難いものであった。地球科学者にとっては、地球の進化は大気・岩石・水という無生物的なものによって説明できるものであり、生物学者にとっては、生命体は環境に適応するものであって環境を変えるものではなかったからである。」これは、J・ラブロックの著作の中の一節です。
態系生態学の創始者であり「オダム生態学」で有名なE・P・オダムの生態系の考え方では、生物の生き様は生態系におけるエネルギー・水・物質の流れによって規定され、その結果である生物活動が無生物的環境を作り上げます。こうすると、生態系生態学も生態系の自己調節機能を謳っていると言えます。これも、ラブロックが著作の中で指摘していることなのですが、ラブロック、オダムともに、1960年代に猛烈な批判を受けました。
れから半世紀が経ちました。今や、生態系生態学や“ガイア仮説的研究”は珍しいものではなくなりました。“ガイア仮説学”は、細胞・マイクロ秒から地球全体・数百年の様々な時空間スケールを扱うようになりました。多くの地球科学者が生物学的素養を身に付けようと努力し、多くの生物学者が地球物理学を理解しようとしています。毎年のアメリカ地球物理学連合(AGU)研究発表会で、生物学と地球科学の融合を目指すセッションである生物地球科学(Biogeosciences)は大変な盛況ぶりを見せています。
て、我が国、我が名古屋大学です。世界に誇る生物学者・地球科学者がおられます。しかし、残念ながら、その間に位置する“ガイア仮説学者”は大変な少数派です。生命科学を理解する地球科学者も地球物理学を理解する生物学者も、数少ないのが現状です。“ガイア仮説学”を基にする環境科学を進めるために、“生物(学者)と無生物(学者)(=地球科学者)は協力し合って(研究)環境を作り上げる”ことが必要だと思っています。
(くまがい ともおみ)
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