環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

Home > 環境学と私

  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 環境学は砂上の楼閣か!?

顔写真
地球環境科学専攻 地球惑星物理学講座
桂木 洋光 准教授
(地球惑星物理学)
境学の対象は宇宙・地球から身の回りに至るまで実に多様な広がりを持っています.この守備範囲の広さのため,環境学は従来の自然科学や人文社会科学のほとんどを網羅する総合科学に位置付けられます.また,具体的課題である自然災害や炭酸ガス排出,エネルギー問題に社会経済環境等はいずれも人類の命運がかかっている大きな問題ばかりです.
かし,これらの総合的問題に対峙するという守備範囲の広さは,環境学を諸刃の剣にしている面があるかもしれません.一般に研究対象のスペクトルが広範であればある程その全体像を明確にすることは難しくなりますし,異なる研究分野間ではお互いの言葉の使い方すら分からないことも珍しくありません.つまり,使命は立派で総合的である環境学は,ともすると学問として発散してしまい,砂上の楼閣となってしまう危険性をはらんでいるということです.
ころで,この「砂上の楼閣」とはご存じの通り見た目が立派な楼閣でも基礎が砂のように脆いものを指す言葉です.しかし,砂とは本当に単に脆いだけのものでしょうか.実は私の研究対象はこの砂を代表とする粉体の基礎物理です.粉体は流体のように容易に流れることもありますが,固まって力の集中を発生することもあります.粉体は身近な対象であるにもかかわらず,基礎的理解は実のところ未だ十分ではありません.
かに環境学の守備範囲が広いと言っても,粉体の基礎物理を知ることといわゆる環境学との結びつきは薄いように感じられるかもしれません.しかし,砂や土の他にも食料や薬品,緊急避難時の人々の動きなど,粉体とみなせるものは自然界に無数にあります.粉体は環境を構成する基本要素の一つであり,粉体の基礎物理を理解すれば環境現象・森羅万象の根幹(の一側面)に迫れるのではないか,それが私の環境学に対するアプローチのスタンスです.砂の物理学を確立すれば,その強固な基礎の上にゆるぎない環境学を盤石なる砂上の楼閣として建てられるのではないか.そんなことを考えながら地道に砂と戯れる実験を楽しむ今日この頃です.
(かつらぎ ひろあき)
 本教員のプロフィール