環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 Think Globally, Act Locally

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都市環境学専攻 建築構造システム講座
大森 博司 教授
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パンテオン(ローマ)
は建築構造学の研究者です。特に、ナゴヤドームのような大きな空間を包む建物の、安全で効果的な造り方を考えることが中心です。普通の住宅の場合、柱の間隔(スパン)は数m、オフィスビルでも数mから10m程度ですが、上記のドームでは200mを超え、内部には柱が一本もありません。これを無柱大空間と言い、これを実現する建築を大スパン建築と言います。地べたにベタッと這いつくばった建物で、これが地上に建つ以上、重力の呪縛を受けますから造るにはそれなりの工夫が必要です。私の出番がここにあります。
ーマ市内、パラティヌスの丘に建つパンテオンは、スパンが40mを優に超えるドームですが、こんなものが紀元前に建造されたということには驚かされます。内部にはスパンと同じ直径の完全球がすっぽり入る無柱大空間が実現されています。それはとても荘厳な空間で、ここを訪れた人は例外なく深い畏敬の気持ちで満たされます。大きいと言うことの持つ一つの力です。
方、身近なところでは学校体育館も大スパン建築です。体育館は地震には比較的強いものが多いのですが、天井板の他、吊りものの照明や音響、運動用設備などがよく落ちるので、これをどう防ぐか、いろいろな対策が提案されています。1995年の阪神淡路大震災の際には、研究室学生総動員で大阪の安宿に泊まり込み、レンタサイクルで神戸市内とその近辺の200を超える小中高校の体育館、公共ホールや劇場の被害調査に走り回りました。多くの体育館が、被災した人々の避難先として利用されているのを目の当たりにして、非常時のこの種の建物の役割を強く再認識しました。
ころで、大きい建物を実現するためには工夫が必要ですが、それはそのまま新しい構造システムの提案につながります。おもしろいと思うのは、大きい構造を実現しようと頭をひねって出てくるアイディアが、実は身近な小さな建築を考える時にも生かせると言うことです。 ”Think Globally, Act Locally”とはこういう解釈も許しているのかも知れません。
(おおもり ひろし)
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