環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 地球温暖化

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地球環境科学専攻 物質循環科学講座
北川 浩之 教授
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地球温暖化についてはまだ検討すべき研究課題はたくさんありますが、CO2の排出抑制と環境保全に配慮して(メタボ対策ともいわれていますが)、自動車の利用を控え、電動アシスト自転車を使うようにしました。
屋さんに行くと、温室効果ガスによる地球温暖化説の信憑性や地球温暖化による被害を緩和するための対策に対して懐疑的あるいは否定的な立場で「地球温暖化の懐疑論」を展開している本がたくさん並んでいます。ひょっとすると、人為的な地球温暖化説の立場で書かれた本よりも多いかも知れません。科学的な発見・仮説に関して懐疑的に捉えることが科学の原点かと思いますが、それにしても、ここまで意見が食い違うことは珍しいのでは。
スコミ関係者と地球温暖化の懐疑論についてお喋りをしていると、最近の政治家みたいに舌をすべらすと思いがけない攻撃を受けるので、「大気中のCO2が増えれば気温が上昇することは原理的には正しいけど、地球の気候はやたら複雑で、気候システムの中で他の要素がどのように効いているか、実のところよくわかっていないのです。」と言うことにしています。マスコミ関係者は、「結局どうなの?」、「どの判断したらいいの?」と結論を知りたがりますが、気候変動の研究者の大部分は「おそらく・・・」といった留保なしに、この質問に対して答えることができる科学的な証拠をもっていないのが現状だと思います。
の専門は、同位体古気候学(Isotope Paleoclimatology)です。学生時代に屋久杉の巨木に注目して歴史時代の気候変動の復元をしました。この研究は有難いことに(時にはストレスを感じることもありますが!)地球温暖化の懐疑論者や歴史学者に好んで使ってもらっています。現在は、20世紀の初頭、古気候研究の出発点に立ったイギリスのC. E. P. Brookの名言「過去が現在を解く鍵」(一般的に知られている「現在は過去を解く鍵」とは逆ですが)を研究のモットとし、アジア各地の湖沼堆積物などの同位体比分析を行い、過去の気候変動の詳細を調べています。過去の気候変動の情報は、地球システムが本来備えている変動特性を理解する有効な鍵です。近年の温暖化を明確に説明できる証拠が見いだせればと思っています。
(きたがわ ひろゆき)
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