環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

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社会環境学専攻 環境法政論講座
野村 康 准教授
(環境政治学/環境教育論)
は、着任してまだ一年数ヶ月ですが、学外で「環境学研究科にいます」という話をした後に、「文系で、政治学が専門です」と言って驚かれた経験を、すでに何回かしています。もしかすると一般的には、環境(学)と政治(学)が、イメージとして結びつかないのかもしれません。
かしながら環境問題は、とても政治的な問題です。環境は多様な価値を持ち、他の問題と密接に関連しているので、利害関係が複雑です。さらに、問題の原因と結果が国境や行政区分を越え、科学的にも不確実なケースが多いため、効果的な対策の選択に向けた議論が容易ではありません。例えば気候変動の場合、エネルギー問題等の経済的側面を持ち、温室効果ガスの主な排出国と被害を受けやすい国は同じではなく、原因や結果、対策の効果などについて、100%確実な科学的知見が存在するわけではありません。環境問題はまた、政治・社会的に弱い人が被害を受けることが多く、問題化や意思決定の過程に政治力の格差が反映され、解決を妨げることもしばしばです。
うした状況において環境問題を解決するには、社会的衝突を避け、各主体が受け入れられるような対策を生み出す過程(=政治)が重要になります。したがって環境問題を考える上で、政治学的な視角は重要だといえるでしょう。
はこれまで主に、アジア太平洋地域の環境政策過程や環境教育活動、NGOの活動等を、比較政治学的な視角から考察してきました。その中でも、途上国に強い関心を持ってきたのは、途上国が抱える環境問題が、上記のような政治性を強く帯びているというのが理由の一つです。また、必ずしも民主的な意思決定が、「科学的」に最善の環境対策を選択するとは限らないことを踏まえ、民主化/民主政治と環境との関係についても興味を持って取り組んでいます。
会科学は社会に対する見方・視角を提供する学問だと言えます。英語の文献などを見ると時折、「theoretical (analytical) lens」といった表現を目にしますが、環境問題の複雑な政治性が良く見えるような「レンズ」を提供できるように、日々努力していきたいと思います。
(のむら こう)
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