環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 環境学と私

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都市環境学専攻 建築構造システム講座
古川 忠稔 准教授
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屋根組 (クリックすると拡大)
築学は,経験と過去に学ぶことが多い学問です。
築構造が私の専門ですが,最近は木造建築構造や耐震性の研究のため,街中の木造建築をよく見に行きます。また,知り合いの大工さんや建築家が,「俺の最近建てた家,自信作だから是非見てけ」といわれ見学に行くこともあります。
のたびに思うのは,日本の木造建築は上手くできている。と言うこと。
材は自然材料,ひとつひとつ性質が違います。時間が経つと,反ったり痩せたりもします。同じ木でも丸太の芯か縁部かでも強度や耐久性が変わります。上手な大工さんは,この様な木の性質を掴んで使い道を決めていく。「適材適所」とはまさに木造建築のための言葉だと感じています。また,木材は強固な接合が難しく,集成材の開発前は大径材を豊富に使えませんでした。そこで伝統的な木造建築は,建物サイズの割には細い木材を数多く使い,全体として何となく一体化させて強さと粘りを持たせています。このような木材の性質を生かした構法は,千年以上の長い間,木造建築を作り続けてきた大工さんの経験の蓄積の賜物でしょう。
ころが残念なことに,木造建築は地震に強いとは言い難い。
庫県南部地震でも木造住宅が多数倒壊し,それが主な原因となって,六千名以上の方が亡くなりました。これを教訓として,木造建築の研究は大いに進み,最新の設計基準で設計すれば,地震ではまず壊れないだろうというところまで来ています。
かし,今の基準で設計した木造建物は,合板で作った箱を積み重ね,四隅を鉄板でガチガチに補強した様な物になりつつあります。これが本当に日本の風土や文化に合っているのだろうか。長く住んでもらえるだろうかと疑念を抱くときもあります。
統的な日本の木造建築は,木と土でできています。建設時の環境負荷はとても小さく,廃材も自然に戻すことができます。その良さを失わず,かつ安全な木造建築を作るにはどうしたらよいのでしょうか。過去の伝統や経験を生かし,かつ新しい物を加えていく。言葉では簡単ですが,実現するのは中々難しく,悪戦苦闘の日々を過ごしています。
(ふるかわ ただとし)
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