環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 環境政策、経済成長、新政治経済学

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社会環境学専攻 経済環境論講座
中田 実 准教授
(環境経済学)
在、世界経済は深刻な不況の波を迎えています。みなさんは、「経済成長が最も大事なので環境保全はあきらめるべきだ」、と思いますか、それとも「環境保全が大切だからもうこれ以上の経済成長は必要ない」、でしょうか。
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60年代以降、急速な経済成長と大気・水質汚染の深刻化などに触発され、経済活動と環境保全との関係について、様々な議論が行われてきました。そうした中、経済成長と環境保全は両立できない、つまり「経済成長を低下させないためには環境保全をあきらめるべきだ」し「環境保全のためには経済成長をあきらめるべきだ」という直観が、理論・実証研究から伝統的に支持されてきました。
間社会は短期的な視野で判断しがちと言われますが、環境対策は経済成長に必ずマイナスの影響を与えるのでしょうか。1970年代の自動車産業のように、環境対策を克服するため企業が技術開発を進展させた結果、低排出・低燃費の製品を生み出し、市場を拡大した例が語られています。90年代に入ると、経済成長のエンジンが、環境負荷の大きい重工業などから、情報産業や技術開発にシフトしました。現在、自動車産業は不況で苦境に立たされていますが、昨年の石油価格高騰を受け、環境対応車の技術開発が再び脚光を浴びています。
済学においても、技術進歩を明示的に扱う「内生的成長理論」の発展を受けて、環境保全と経済成長との、新たな関係について議論が行われてきました。私の研究では、環境税は、短期的には経済にマイナスの影響を持つかもしれないが、長期には汚染水準を減少させつつ、研究開発を促進させ、成長率を上昇させる可能性があることが分かってきました。
し環境対策が長期において経済成長にプラスの影響を持つならば、なぜスムーズに導入されないことが多いのでしょうか。環境問題がもたらす損害の大きさや、削減費用負担額などが国・地域毎に異なることが、各国に利害対立をもたらし、政策導入を遅らせる原因になっている可能性があります。こうした「新政治経済学」と呼ばれる分野の問題についても、考えていきたいと思っています。
(なかだ みのる)
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