環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 地域気候政策(local climate policy)が私の研究テーマです

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社会環境学専攻 社会環境規範論講座
杉山 範子 助教
(環境政策)
なたは20年後、40年後、どんな社会で暮らしたいですか? 気候が変化すると予想される将来、私たちはどんな社会を目指すべきでしょうか?
気中の二酸化炭素濃度が上昇している今、世界全体で、2050年までに温室効果ガスの排出を少なくとも半減させることを目指し、京都議定書の次の国際枠組みづくりの国際交渉が進められています。先進諸国は80〜95%という大幅な削減が求められています。温室効果ガスの排出を減らし温暖化の影響を緩和するため、そして、変化する気候に適応するため、どのような気候政策(climate policy)を地域で展開していくのか、「地域気候政策(local climate policy)」が私の研究テーマです。
暖化対策というと、二酸化炭素(CO2を減らすために我慢や忍耐を強いられるようなイメージを持つ人が多いようです。もちろん、生活の中の無駄なエネルギーを省くことは大切ですが、将来の大幅削減のためには1人1人の省エネ行動だけでは足りません。ライフスタイルとともに、社会のしくみも転換していかなければならないでしょう。
本では地球温暖化懐疑論の本がブームになっている昨今ですが、欧州では、将来を見据えた長期目標や法律、条例が次々に作られています。例えば、スペインのバルセロナで始まった太陽熱の利用を義務づける条例は今や「バルセロナ・モデル」といわれ、ポルトガル、イタリア、ベルギー、ドイツなどの自治体に広がっています。ドイツでは、新築建物の熱需要の20%を再生可能エネルギー熱(太陽熱、地熱、バイオマス熱のほか、環境熱・廃熱のヒートポンプ利用を含む)でまかなうよう義務づけたバーデン・ビュルテムブルグ州の州法と同様の措置が、国の法律としても制定され、2009年から施行されています。1980年代にドイツのアーヘン市から始まった再生可能電力の配電会社による買上制度は、国レベルで導入され、ドイツは圧倒的な風力発電大国になり、また、2005年には日本を抜いて太陽光発電の導入量でも世界1位になりました。アメリカは、ブッシュ政権時に京都議定書から離脱したものの、強いリーダーシップをもつオバマ大統領のもと、大きな変革が起ころうとしています。世界は明らかに、「低炭素社会」への具体的な道を進み始めています。
本は環境問題への人々の関心も高く、世界が注目する高い技術もあるのですが、それが確実に根付き広がるための社会の仕組みがまだまだ足りません。国の制度ができるには時間がかかりますが、前述のような地域で独自に作ったルールが、やがて国の仕組みになり、また、国際的に広まっていく事例に私は注目しています。この地域から「なごやモデル」を発信できるような研究を進めていきたいと思います。
(すぎやま のりこ)