環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 私の社会学と環境学

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社会環境学専攻 社会学講座
准教授 上村泰裕
(福祉社会学・比較社会政策論)
の専門は社会学ですが、詳しくいうと福祉社会学とか比較社会政策論ということになります。福祉といっても、国や自治体が提供するサービスだけではありません。会社は従業員のために社宅や企業年金といった福利厚生を提供してきました。また、家族のなかで、お祖母さんが孫の面倒を見るとか、息子が年老いた親の世話をすることもあります。さらに、地域のなかでは福祉ボランティアの活動が盛んになってきています。こうした福祉の組み合わせのことを「福祉レジーム」というのですが、その福祉レジームのあり方を諸外国と比較することで、日本の福祉の特徴や改善すべき点が見えてきます。
の社会学の特徴は二つあります。一つは「比較」が大好きなことです。小学校で朝顔の実験を習った方も多いでしょう。日光を浴びた朝顔は咲くのに、覆いをかぶせておいたほうは咲きません。社会現象では実験は難しい場合が多いので、すでに存在する違いを比較して理由を考えます。最近はお隣の韓国や台湾との違いに興味をもっています。台湾の若い女性は、日本や韓国の半分ほどしか家事に時間をかけません。また、日本では正社員もパート社員も転職を難しく感じる人が多いのですが、韓国のパート社員はそれほど難しく感じておらず、台湾では正社員の転職もわりと容易です。なぜでしょうか?
う一つの特徴は「政策志向」ということです。現代社会学の創始者の一人ヴェーバーはこう言っています。ある問題が政策的な性格をもっているかどうかの目印は次の点にある。つまり、決まりきった目的を達成するための手段を考えるだけではすまないこと、問題が価値観を問う領域にふみこんでいるため、まさに判断基準となる価値そのものが争われざるを得ないことであると。自由と平等のどちらが大切かという問いに科学的な答えはありません。比較することで科学的に決着できる点は決着をつけ、それでも残る価値観の対立はむしろ対立点をはっきりさせること、これが私の考える社会学の方法です。
は狭い意味での環境学の専門家ではありませんが、環境学と全く無関係でもないと思っています。こんにち人間社会の安心・安全や持続性といった問題を考えるうえで、福祉の視点を欠かすことはできないでしょう。また、社会政策と同様、環境問題においても価値観の対立を避けて通ることはできません。例えば、貧しい人に負担を強いる環境税は正当化できるか。おそらくさまざまな意見があると思います。こうした議論に加わり活性化することで、名古屋大学の社会学講座が環境学研究科に属していることのメリットが出てくるのではないかと考えています。その機会を今から楽しみにしています。
(かみむら・やすひろ)
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