環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 「やさしい環境」を支えるピクトグラム

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社会環境学専攻心理学講座
准教授
北神慎司
(応用認知心理学)

さんも、駅や空港、街中などで、写真1のような案内表示を,一度や二度ならず、見かけたことがあると思います。これらのマークは、専門的には、「ピクトグラム(pictogram)」と呼ばれもので、表したい物や場所をその形を使って表現していることから、言語に縛られることがない、という大きな特長を持っています。ですから、その国で使用されている言語が分からない外国の方、まだ言葉を十分理解することができない小さなお子さん、小さく細かな文字が読みづらいお年寄りなど、さまざまな人にとって、わかりやすいものであると言えます。つまり、ピクトグラムは、人にとって「やさしい環境」を提供するツールのひとつとして捉えることもできます。
の研究テーマのひとつは、このようなピクトグラムの「わかりやすさ」や「わかりにくさ」について、専門とする認知心理学的な視点から明らかにする、というものです。「認知」という言葉自体、あまり聞き覚えのない方も多いかもしれませんが、簡単に言えば、「見る、聞く、話す、書く、覚える、考える」ということです。すなわち、人間の「知」の仕組みを明らかにすることが、認知心理学という学問の大きな目標となっています。
クトグラムの「わかりやすさ」や「わかりにくさ」を考える上で、ひとつの興味深い例を紹介したいと思います。写真2に示されているピクトグラムを見て、たいていの方は、「ここを土足で踏むな!」という意味は理解することができると思います。それでは、「なぜ」という理由までお分かりでしょうか?実は、このピクトグラムはタイの王宮の中に設置されているもので、地面に敷かれているカーペットは、国王だけが通ることができところであるため、観光客など一般の人は踏んではいけない、ということなのです。この例から、ピクトグラムが本当の意味で理解されるためには、ピクトグラムそのものを考えるだけでなく、ピクトグラムを取り巻く環境や文脈も考慮しなければならない、ということがおわかりいただけると思います。
クトグラムは,このように案内表示として使われるだけでなく,主に、音声言語が使えない人にとっての補助・代替コミュニケーション(AAC)のツールとしても使われています。今後,こうした幅広い用途や目的で使われているピクトグラムの研究を続けていくことによって,さまざまな人にとってのやさしい環境作りに少しでも貢献できれば,と思っています。
(きたがみ しんじ)

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中部国際空港内の案内表示

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タイ王宮内のピクトグラム

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