環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 私のアメリカ政治外交史研究と人間環境問題

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社会環境学専攻社会環境規範論講座
准教授 井口 治夫
(アメリカ政治外交史)

の専門領域はアメリカ政治外交史で、研究は、次の6つのテーマに分類できます。@米国共和党右派のハーバート・C:フーヴァーに関係する戦間期(第1次世界大戦終結後から第2次世界大戦勃発までの時期)の米国内政治と米国外交、Aフーヴァーと連携した共和党右派ボナー・フェラーズ准将(ダグラス・マッカーサー元帥の側近)の伝記(時代区分は20世紀初頭から1970年代初め)、Bフェラーズと世界観を共有するようになった米国人の日本研究者ケネス・コールグローブ、コールグローブと親しかったリベラル派政治家エルバート・トーマス連邦上院議員、コールグローブの弟子であったチャールズ・ファーズ、ファーズの日本研究仲間のエドウィン・ライシャワーとヒュー・ボートン、トーマス上院議員の秘蔵っ子で日系人リーダーのマイク・マサオカという米国知日派の戦前・戦中・戦後、C戦時中東アジアで破壊されたり盗難の対象となった美術品・歴史建造物の日本占領期における保護活動、D1960年代後半以降の米国政府の人間環境問題(歴史文化遺産の保護や地球環境問題)、E経済のグローバル化のなかで繰り広げられてきた日米間における米国資本導入を巡る戦前から戦後の協調と対立。
メリカ合衆国を理解する上で、フロンティアの開拓で建国が進められてきた米国の環境史を抜きに理解することはできません。しかしながら、アメリカ環境史だけに焦点をあわせていては米国を理解できません。米国を理解するためにはアメリカ環境史はその一部分を構成するに過ぎないわけです。私は、今まで行ってきた研究をベースにポスト冷戦期における米国の地球環境問題への対応について論文で考察を行ったり、フーヴァーの災害対策・人道的援助・食糧援助といった彼の商務長官時代までの環境領域と、今風に言うと人間の安全保障への対応について2つの論文のなかで考察したことがありました。軍縮と原爆投下を巡る米国人の考え方も広い意味で環境領域に含まれるテーマであると思ってますが、この観点からは上記@、A、B(エルバート・トーマス)の研究論文で取り上げております。CとDの文化遺産保護に関する研究は、サバティカル中から資料をいろいろと集めているところです。授業やゼミでは、学部と大学院とともに、国際政治における環境問題やアメリカ政治外交のなかにおける環境問題も取り上げております。
(いぐち はるお)

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写真解説:米国ボストン近郊の母校。この建物は、在学中寮として利用されていた。スコットランドの古城の石材を利用したといわれており、建築家ヘンリー・H・リチャードソンがデザインした。リチャードソンは、建築家ルイス・サリバンやフランク・ロイド・ライトに多大な影響を与えた人物である。この敷地のもともとの所有者(大富豪)が近親者から命を狙われていることを恐れて建築したそうである。写真のすぐ後方はボストン市内まで流れているチャールズ川で、川の中州まで建物から秘密の地下通路がある。地球温暖化に伴い、チャールズ川も洪水の被害を広範囲におよぼすという指摘をする専門家もいるが、上記の区域も水没するのであろうか。

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