環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 趣味と環境とお仕事

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社会環境学専攻経済環境論講座
准教授 佐藤 泰裕
(都市・地域経済学)

縄県の西表島には、日本でその周辺以外には見られない生き物が多く暮らしています。猛禽類であるカンムリワシから様々な種類のクイナ、体長1センチ程度のクサゼミまで、驚くほどの多様性です。もちろん、ハブや3〜4センチもあるヤスデのように、嫌いな人にはたまらない生き物も多く見られます。昨年、この島を訪れ、こうした生物の多様性に触れる機会があり、大変に楽しい経験をしました。車道を横断するセマルハコガメを見つけ、急いで捕まえて草むらに運んだりもしました。
境問題は多くの人の暮らしに影響を及ぼす問題であり、社会を維持していくという観点から真剣に考え、議論するべきだという意見に反対するつもりはありません。ただ、個人的には、単純にこうした生物の多様性を素晴らしいと思う気持ちから環境問題を考えたいと思っています。一方で、蛇やヤスデを気持ち悪いと思う方がいるのもまた事実です。むしろ、嫌いな方のほうが多数派かもしれません。しかし、私の専門とする経済学では、どちらの好みの方が重要であると議論することはナンセンスであり、個人の選好(価値観)に優劣をつけるべきではない、と考えられていますので、経済学の研究者として自分の好みは大事にしていこうと思っています。
うした選好に関する基本的な考え方は単なる趣味の話だけでなく、仕事や学問の上でも有用である、ということは、環境学研究科で常々実感します。他の分野の方と話していると、経済学の世界で暮らしてきた自分には思いもよらない公理系を前提に話をされることも多く、自分の考え方が、特定の選好の上に成り立っていることを改めて気づかされるからです。この感覚は自分の専門の人に囲まれて仕事をしていたのでは味わうことはできないものであり、日常的にそれを実感できるのは多くの分野の方々が集まる研究科に所属する醍醐味であろうと思います。
(さとうやすひろ)

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イリオモテモリバッタ

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カンムリワシ

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