環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 増大する中国の資源需要

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都市環境学専攻都市持続発展論講座
准教授 白川 博章
(環境経済学)

国に調査に行くと、本などで知っていたことが実感として分かることがあります。
昨年、中国の山西省に調査に行ったのですが、そのときのことは、特に印象に残っています。山西省は北京の西側に位置し、石炭が豊富な省として知られています。我々は、山西省での水資源管理に関する調査を終え、北京に向かって車で移動していたのですが、石炭を積んだトラックの大渋滞に巻き込まれてしまいました。トラックの運転手に渋滞の原因を訊ねると、山西省から北京や天津に向けて石炭を運搬しているトラックは交通量が減る夜間にならないと、ある地点から先は進入できません。そこで、交通規制が終わるのをトラックで待っているのだそうです。渋滞の長さは10km以上にもなるそうで、かなりのドライバーがいるため、スナックやインスタントラーメンを売りにくるおばさんまでいました。結局、我々は、その幹線道路からあぜ道に入り、迂回路を通って北京に向かいました。中国のすさまじいエネルギー需要を感じました。
年、中国では、年率10%といった、高い経済成長を遂げていますが、エネルギーや資源の需要が急増しています。2000年における石炭の生産量は約13億トンでしたが、2005年には22億トンまで増大しました。また、2006年の中国における鉄の生産量は約4億2千万トンになりました。日本の鉄の生産量は約1億2千万トンで、米国は約1億トンですから、日本と米国の生産量を足しても、中国の半分程度にしか過ぎません。さらに、驚くべきことは、その増大のペースです。ここ数年をみますと、生産量は毎年6千万トンから7千万トンずつ増えています。
国の資源需要は、その量が膨大なだけに国際的な影響が懸念されています。また、中国だけでなく、インドやロシアの資源需要も引き続き増大すると見込まれています。資源不足は国際的な紛争の原因になりかねません。したがって、資源の有効利用は、もはや将来世代のためではなく、現世代の安全保障という意味あいが年々強まっているのではないかと思います。
(しらかわ ひろあき)

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石炭を運ぶトラックの渋滞

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