環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 地下環境を見る「目」

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地球環境科学専攻地球惑星科学系
准教授 渡辺 俊樹
(地球惑星ダイナミクス)

間が物事を認識するには「見る」ことが大きな比重を占めると聞きます。地球の内部や深海にはまだまだ謎が多いのに、はるか宇宙の彼方の理解が進んでいるように思えるのは、宇宙が直接見えることも一因ではないでしょうか。望遠鏡や顕微鏡を例にあげるまでもなく、見えそうで見えないものを何とかして見てみたいと思うのは人間にとってごく健全な欲求(反倫理的行為や犯罪行為でなければ)と言えそうです。
は、地震が起きる場所には何があってどうなっているのかを理解するために、まず、そこを「見る」こと、そして、地震が来るまでのプロセスを「監視する」ことを研究しています。もちろん目では見えないので地震波や電磁波などを使って探査します。米映画「ジュラシック・パーク」(1993)をご存じの方は多いと思いますが、冒頭に、掘り出す前に振動を使って恐竜の骨を細部まで可視化する装置が登場します。それはまだ無理ですが、炭化水素資源の探査では人工地震を使って地下数km程度まで地下の様子を詳細に描き出すことが実現しています。一方、マントルやコアといった地球のずっと深部はエネルギーの大きい自然の地震波を使って調べられています。しかし、地震が起きているあたりは、人工的な手法ではなかなか手が届かず、自然地震を使った手法では細部がわからない、いわば見えにくい領域となっています。ここをどう攻めるかが課題です。
は以前資源・エネルギーの分野で研究をしており、炭化水素資源、メタンハイドレート、地熱なども探査のターゲットとしていました。これらは今や地球環境とエネルギー問題を語る上でのキーワードになっています。また、物理探査は学際的な学問ですから、地球科学や資源開発だけでなく、土木建設(非破壊検査や地盤調査)、医療(超音波検査装置)や農学(農作物を切らずに検査)といった分野の人とも研究をしました。物理探査は問題解決を助けるソリューションを提供する名脇役といったところでしょうか。
だん環境学の枠組みを特に意識していませんが、強引に環境と学際に結びつけたところで駄文を閉じます。ちなみに、私はクーラーが嫌いでできれば使わずに過ごしたいし、できれば自転車で通勤したいと思っていて、土いじりと緑が好きな、ちょっと環境に優しい人間だと思っています。
(わたなべ としき)

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精密制御信号システム「アクロス」の振動発生装置。長期間にわたって地震発生域を監視し、そこに生じる微小な変化を捉えるためのシステムで名古屋大学が開発しました。

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名古屋港に入港した掘削船「ちきゅう」。統合深海掘削計画(IODP)の目標の一つに地球環境のダイナミクスの解明があります。私は環境保護安全パネルの一員を務めています。

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