環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 「環境学研究科、あるいは一貫のお鮨」

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社会環境学専攻社会環境規範論
准教授 戸部 真澄
(日本・ドイツの環境法・行政法)

境学研究科に着任して一年が経ちました。本研究科には、私と同じ法律学の専門は一握りしかいません。でもそれは他の専門も同じで、ここは、そういう各専門の「つぶつぶ」がたくさん集まって一つのまとまりをなしています。そして、その上に「環境」という共通のネタがぺろんと乗っかっています。そう、まるで「一貫のお鮨」みたいに。環境という一つタネの下で、各つぶつぶが独立しつつもまとまりあい、互いの研究文化を尊重しながら研究・教育を進めていること。これは本研究科の貴重な美点だと思います。
界なき交流、これも本研究科の魅力の一つです。私は本来おずおずとした性格ですが、ここでは随所で他分野の同僚と交流する機会があります。それはときにとても刺激的な経験です。例えば。法律学において、憲法は言わば王様で、その価値には最大の敬意が払われます。ところが、現場の環境実務に精通する同僚曰く、「実務では憲法なんて意味ないよ」と。「じゃあ、学説(学者の理論)は?」と聞くと、「学説なんかもっと意味ないよ」。その日は酒の席でもあったのですが、実務のカラフルな話を聞いて、ずいぶんと頭がクラクラしました。それからまた。ある地域で環境をめぐる住民運動が勃発しているとします。法律学は、それを病理として捉え、適切な法整備等によって、そういう不幸な運動がなくなるようにせねば、と考えます。ところが、社会運動を専門とする同僚曰く、「そういう下からの運動があってこそ社会は健全だとも言えるのよ」と。こういう、予想外の刺激は割にくせになります。それがないと何だか味気ない気もしてきます。まるで、お鮨の中のワサビみたいに。
としての環境学が総体としてどのようなものになるのか、それはまだわかりません。でも、それが、こういう各分野の独立と尊重、絶えざる刺激の交換から生まれてくるものであることは間違いないと思います。我々が環境学研究科にあえて集う意味も、おそらくはそこにあるはずです。本研究科が、これからも「幸福な一貫のお鮨」であれば、と思います。
(とべ ますみ)